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夢を見ていた。彼女と稲穂の海で歩く夢だ。
白いワンピースに麦わら帽子を被る彼女。麦わら帽子で陰っていても、彼女の顔の綺麗な凹凸がわかる。彼女の髪と一緒に流れる稲穂が、彼女を今にもさらいそうに笑っていた。そして風の向かう方へ、彼女は走り出してしまった。
誰がこんな在り来りな映像を見せているのだろう。
あのひとは誰なんだろう
そう思いながらしゃがむと、彼女の呼ぶ声がした。ゆっくり立ち上がると後ろの方から抱きしめられた。
「居なくなったのかと思った」
「居るよ」
何故かこの世界なら、目を離すとふといなくなってしまいそうな気がする。なぜだかは分からないけれど。
「ずっとここに一緒にいようよ」
「それは無理だよ。私達も行かなきゃ」
「どこに?」
「それは、分からないけど」
「うん」
どうやら彼女も気づいているようだ。
「また、会えるよね」
「どこに居ようと、お前に会いに行く」
「うん。待ってる」

彼女が残した吐息を最後に、腕が寒くなった。暖かい日差しに差されているのに。
あのひとが誰だったのかさえも思い出せず、ひとつふたつと涙を零した。きっとかけがえのない、大切なひとだったんだと思う。
ゆっくりと目を閉じた。