「…ッ…ぁ…ア、」
その声を
「んん…っ、…」
その表情を
「……っぁう…」
その匂いを
僕以外の誰にも、見せちゃ駄目だ
「…初めてじゃないの?」
「…え?」
「随分慣れてたから」
「……慣れてなんか、ない」
こんなことしたのも、
こんなことしたいと思ったのも、初めてなんだ…
貴方は、僕の初めての全てなんだ
僕の中にあった
人間っぽい部分。心の部分。男の部分。
ぱっとしなかった部分。あまりにぱっとしないから自分でも気付いてすらいなくて
どれだけ美しい女性が目の前に現れても、どれだけ優しい言葉をかけられても、どれだけ色っぽい声で誘われても、何も、
なんにも思わなかったんだ。
だから僕はきっと
普通の人とは少し、違うんだって
そう思った。
魅力的な人なら何人も知り合ってきたけれど
そういう気持ちになったことは一度もなくて、心臓に手を当ててみても僕の心は何も言っていなくて、ぱっとしない。
でも
それで困っていたわけでもない。なんならラクだった。そっちの方が、今よりずっとラクだったよ。
「…ハニ、は……慣れて、た」
「…そんなことないよ」
「……じゃ、じゃあ僕が…初めて?」
胸を踊らせてそう尋ねると、彼は何かを含んだように口を瞑り、微笑んだ。
「こっちにおいで、ジュン」
僕はとても悔しかったけれど、彼に抱きしめてもらいたかったから近寄った。
そして大きく開かれた両腕の中に飛び込んで、彼の華奢な背中に手を回した。
抱きしめて…
もっと強く力を込めて
貴方の想いを僕に教えて……
「今日のコレは、過ちにした方がいい」
「…あやま、ち…?」
「間違い」
「……なにも間違えてない」
「…」
彼は、んー…と困ったような声を出して
だけどその後僕を抱きしめる力を強めながら、笑った。
「そうだね。なにも間違えてない」
「……」
「ジュンも、おれも間違えてないけど」
「……」
「ジュンとおれ以外の人は、間違いだと言うよ」
「…なん」
「それぞれなんだ。だけど、きっとこういうのは正解だと言われにくいから」
" だから、黙っていよう "
そう言って僕の頭をそっと撫でた。
子供に言い聞かせるみたいに。分かった?いいね?と、何度も何度も念を押されているみたいに。
彼はずっと抱きしめてくれているのに
彼の気持ちは全然伝わってこない…
知りたいんだ
教えて欲しい
ハニヒョンはどう思ってる?
僕の、こと。
「…ジュナ?」
「……分かった」
「…いい子だね」
彼からは伝わってこない。
僕と同じ、こういう感情。
つまり僕は、僕の恋は、
叶わないということか。
「…ハニ、もう一回しよう」
あぁ、ホラ
苦しいなぁ
知りたくなかったよ
こんな恋心
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