長いため折り畳んでいます。
お好きな番号をぽちりと。

1-10
午前5時。薄暗い部屋でダーツをしながら夜明けを待ったあの日が泣くほど大切な日々の最後の1ページだったと気付いたのは全てが終わった後のことだった。

もう会えないだろう人達と疑いもせず笑い合えていた時間を人々は青春と呼んだのです

この夜が明ける頃、過ぎ行くものを見送って一人枕を濡らすのでしょう。(愛した日々は今も変わらず胸の中に)

君の未来が明るいことを祈って、いつか会えるようにと願って、またなんて言葉に縋っていた僕達は初めて別れの言葉を口にした(じゃあね、ばいばい。ありがとう)

世界が終わるとニュースが嘆く。泣き出す彼女を抱き締めて、僕は世界一優しい嘘を付く。「大丈夫。明日も変わらない毎日がやってくるよ」

何と言っても美しい女だった。世界中の男を魅了するような色気を纏って蠱惑的な表情を浮かべるその女は俺だけのものになる気なんてこれっぽっちもなかったのだろう。

お前がいないと生きていけないと言ったその口で貴方は事も無げにさよならを言う

汚れきった東京の喧しいネオンをよりにもよって美しいなんて思うようになってしまったの。(私も随分醜い女になったものね。)

なんでも出来た可能性なんて名前の無鉄砲な魔法はいつの間にか日常に溶けていった

くだらないと吐き棄てたはずの誇りをこの胸に抱いたまま僕達は見えぬ明日に銃口を突き付けるんだ

11-20
春になったから出かけよう。君と2人、変わり行く世界を惜しみながら、新しい世界を探す旅に出よう。

今しか聴けない歌がある。未だ幼く無鉄砲が許された時代の残り香を掬うような声は10年後にはきっと聴こえなくなるのだから。

終わりを迎えたあの場所にまた新しい風が吹いて、きっと知る事の出来ない君の物語が始まって行くんだ(そうして僕等は生きていく)

全てが0になった時、最初に思い浮かんだのは君の顔だった(原始的で崇高な感情の名前は、)

呪いのような言葉を貴女に。決して一人で泣けないように、死のうなんて思えないように。(「愛してる。」)

いつか消えると教えられた星空を見上げていた。先に消えるのはきっと僕達の方だなんて気付けないまま。

いつだって僕は写真の向こうの青い世界に焦がれてこの手を伸ばすんだ(届かない指先がざらついた紙面を撫でるのを知りながら)

新しい時代の音がする。世界が終わる音を背中に僕達は終わらないための戦争を始めた。

動乱の日々の当事者達は見えぬ未来に慄きながら明日のために闘ってきたのだ(繰り返される歴史の中で常に世紀末は華々しく輝く)

円周率を100桁覚えたところでそれがこの世で何の役に立つというのさ。そんなことより外に出て、隣近所におはようと言った方が何百倍も有意義だって今から僕が教えてあげるよ。

21-30
誰の一番にもなれないのであれば、誰もが羨む孤高になろう。触れる事も嘲る事も許されない唯一になって初めて僕は僕を肯定出来るのだから。

僕等は異端の全てに病という言葉を付けて、常識の中で安心しようとするのです。(その牙がいつか自分に向くとも知らずに)

素敵な鞄と素敵な靴。ちょっとだけ背伸びして揃えたそれは、私を知らない世界に連れて行ってくれるの。

あぁ、そうとも。さよならだと君が言うのは最初から分かっていたんだ。

君のいなくなったこの街で、僕はどうやって生きていけば良いのだろう。(未来を胸に旅立って行った君を引き止める言葉も持たないまま)

低気圧が酷い。ボルドー色のソファに寝転んで手探りでタバコを探す。そうやって問うのだ。「寂しいのはいつ?」何時もだよ、って応えるのはあなた。

それは別れに至るまでの明るく楽しい物語だった。(結末が悲しみを伴う物だったとしても、その軌跡が希望に満ちていた事を忘れないで)

今しか出来ない事だった。息を張り詰めて、我武者羅に無我夢中に世界を生きようと、この存在全てを賭けて世界に挑もうとしたんだ。

ネバーランドが見えなくなって、僕達はいつしかとてもつまらない大人になってしまった。(あの場所はいつだってすぐ隣にあるはずなのに)

誰もが一度はそれを夢見た。彼女の名前は東京。酸いも甘いも噛み分けた、憧れのマドンナだ。

31-40
平成最後の夏は、酷く暑いものだった。早く過ぎろと願ったこの季節を、いつかの僕はどう思うのだろうか。(別れを知ってなお走り抜けた日々)

愛した気持ちを置き去りにしたまま出逢い別れた思い出を、今も君は光と言う

終わる瞬間だけは自分で決めようと思ってるの。だって私の想いは私だけの物だったから。(例え2人の想いの果ては永遠では無かったとしても)

かの晴れ舞台へ一緒に行こう。僕の青春の全てだった君となら、笑って最後を飾れる気がするんだ。

それは僅かな時だけを持った迷い子が世界に軌跡を遺すための旅路だった。(彼が消えた後も、その標はきっと世界を照らす)

23時に始発駅から発車する成田空港行きの最終電車。夏の終わり、大きなキャリーケースを引いたあの人が向かう場所は、一体どんな景色なんだろう。

君にさよならを言う準備はもう出来ている。たったひとつ、捨てきれなかった未練だけを残して。

例えば朝起きた所で隣に見知らぬ女の子が寝てる訳でもないし、昼過ぎの学校で突然世界を救えと頼まれる訳でもないし、それでもこんな毎日が堪らなく愛おしく思えるようになったんだ。

時に儚さを慈しみたくなる時がある。それは例えば故郷の夏祭りであったり、二度と帰れぬ学び舎の喧騒であったり。

いつか終わる夏を愛すると決めたあの日から、僕は一度たりとも後悔しなかった。
Moratology