「乾燥してんなぁ・・・ちょっとリップクリーム借りるぜ!」
「えっ ちょっと!」
私の背後に回りリュックから化粧ポーチを取り出すグリーン。中からリップクリームを探し当てる。
「へぇ、良いの使ってるじゃねーか」
「返してよ!それ苦労して手に入れた限定フレーバーなんだから!!」
「それ聞いたら尚更使いたくなるな!遠慮なく借りるぜ〜♪」
「あーーーーーっ!!!」
グリーンがリップクリームを容赦なく自分の唇に滑らせていく。なんで女物のリップ使うの抵抗ないのコイツ!あ、ナナミさんか?ナナミさんの影響か?!
けどまぁ、非常に悔しいけど使われてしまった物は仕方ない。諦めて溜息をつき、次に使うからそのままちょうだいと言えば「ん」と短い返事がきた。
「なかなか良いな、コレ」
「でしょ?ぷるぷるになるよね」
果たしてぷるぷるの唇がグリーンに必要かどうかは著しく疑問だけど・・・と思っていたら使い終わったらしい。こちらにリップクリームを差し出してきた。
受け取ろうと手を伸ばすとサッと引っ込められる。何で!
「もう!何がしたいの!」
非難を込めてグリーンを睨むと、ニィっと笑ったかと思えば急に距離を詰めてきて。驚いて一歩引こうとした私の肩を掴み動けないように押さえつけてきた。次いで、唇にむちゅ、と触れたリップを塗ったばかりの唇。唇全体が重なり合うように角度を何度か変えて押し付けられた。
離れる頃には、私の唇にもしっかりリップクリームが移っていて。恥ずかしさも相まって唇を手で覆い再びグリーンを睨むけど、威嚇効果は半減していると思う。
相変わらずグリーンはニヤニヤしながらこちらを見下ろしている。
「こんな良いリップ使う理由は、目の前のイッケメンな彼氏様とのキスに備えて、だろ?」
「は、ハァ?!自惚れないでよ!違うから!」
「素直じゃねぇなぁ。もっかいする?」
「しないよ!もーリップ返してっ!!」
グリーンの手から奪ったリップクリームは私の唇に使わず、そのままポーチへしまった。
・・・鋭いじゃん。グリーンのくせに。