【はじめて化粧をして会った時】


「うっわ ケッバいな!ないわー」

「あぁ?!」



「おっ お前 元がそんな悪くねぇんだからそんな厚塗り必要ねぇよ!」

「?!」





【新しい服を買った時】


「どうどう?!一気にオトナっぽくなったよね!!」

「おー点数つけてやるよ。12点」

「なんだと!!」



「・・・じゅ、12点満点中・・・」

「?!」





【私もポケモンパフォーマーを目指してみようかと冗談を言った時】


「はぁ?やめとけやめとけ!お前なんてかなりのモノ好きじゃない限りファンなんて付かねーよ!」

「んだとゴラ」



「ま、そのモノ好きにオレがなってやってもい、いーけど・・・」

「?!」



ちょうどお化粧を覚えた辺りから、グリーンにドキッとさせられることが多い。

これは所謂トキメキとかいうやつなんだろうか。いやいや待って、あのグリーンだよ?旅してる頃、いつも先回りして嫌味言ってきたあのクソガキグリーンだよ?た、確かに昔から悪くない顔してたから成長してカッコイイ部類に入ったとは思・・・

・・・・・・ってないんだから!!思ってないんだからね!!!(焦)


邪念を振り払いつつたまたま本屋で目にした恋愛心理学の本を、頭に浮かぶグリーンを否定しながら開く。

おっ なんか面白い項目がある。なになに、女性を射止めるのに効果的な方法?へー、なんだろ!

目次を見ながらページを飛ばす。そこには。

『女性を落としたいなら貶してから褒めることが有効!モテたい男性は実践しよう!』

・・・身に物凄く覚えがある。


あーーーーー、なるほどね。
グリーン、モテたいのか。そうかそうか。幼馴染とはいえ、私も女だもんね。そっかぁ・・・

急に冷めていく感覚。浮かれちゃって馬鹿みたいだ。

興味のなくなった本をパタンと閉じて店を出た。

だいたい、最初から好きでもなんでも無いんだし、こんなこと考える必要もないんだ。落ち込むなんてありえない。

自分でもどこか言い訳じみていると気付いて、もう一度、今度は音にして吐き出す。

馬鹿みたい、と。



*****


「よぉナマエ!その荷物は買い物帰りか?お前力無いし、オレが手伝ってやってもいいぜ!」

「いらない。もうその手には乗らない」


グリーンの前を素通りする。モテるのと、変な期待をさせるのとは明確に違うと教えてやりたい。


「はぁ? なんだよその手って」

「自分がよくわかってるでしょ」


振り向かず冷たく言い放ったと自分でも思う。これ以上の関わりを許さないとばかりに歩みを進めた。着いてくる気配がないのを確認して、今後はグリーンとの関わりを見直す必要があるなぁと考えていた。


 ・

 ・

 ・


「はぁああああ〜・・・なんでオレっていつも素直に言えないんだろ・・・なんか今日ナマエ冷たかったし・・・遂にオレ嫌われたかもしんねぇ・・・!

どーしよウィンディ・・・!」

「ガゥ・・・」


私が本で見たモテテクニックとは無縁のグリーンが、ウインディに身体を埋めて泣きついていたなんて知らずに。


天然策士
天然策士