開ききらない目を何度か瞬きして焦点を合わせると。
なんとすぐ横に向かい合う形で寝息を立てている赤い服の男性ーーーって、え!?
レッド?!
トレードマークの帽子を脱いで私と同じような姿勢で眠っている。少し視線を移すと、レッドのポケモン達が私のポケモン達と一緒に遊んでいた。いつの間に来たんだろう・・・ウインディもレッドによく懐いているから、レッドに入れてと言われて快く応じたんだろうけど・・・
それにしたってこの距離!近い近い!吐息が当たるこの距離で並んで眠るのは恋人しか許されないと思います!レッドはそこのところ頓着ないから困る・・・!
私は充分寝たし、ウインディのもふもふベッドはレッドに譲ろう。起こさないようにゆっくりと上体を上げ、そろりとウィンディから抜けようとしたーーーが、パシリと手首を掴まれる感触。掴む人なんて一人しかいない訳で。目を向けたレッドは覚醒しきれていないボーっとした顔でこちらを見ていた。
「あ、レッドごめん起こしちゃったね。まだ寝てて良いよ」
「ん・・・」
「だからあの、手、」
離すね。と続ける寸でのところで、掴まれていた手首がグイッと引っ張られレッドの方へ倒れ込んだ。
「うわっ?!」
衝撃を想定して固く目を閉じたけど、ウインディのもふもふと抱きとめてくれたレッドの腕のおかげで大事には至らなかったようだ。目を開くと視界いっぱいレッドの胸元。その距離ゼロcmの完全密着。もうこれ完全に恋人じゃなきゃアウトなやつだ!!離れようと試みたけど、レッドが抱き枕よろしくしっかりがっしり私に腕を回しているので徒労に終わる。寝惚けてるのにどうしてこんなに力強いの!
「あっ あああのレッド・・・?!」
「・・・・・・・・・さむい」
そう呟いて更にぎゅっと抱き込まれる。普段あんまり意識してなかったけど、逞しい腕に、服の上からでもわかる厚い胸板に、ほのかに香る制汗剤の匂いに、急に異性であることを意識してしまう。
半ばパニックではあるけど、シロガネ山に半袖でいたようなヤツが寒い訳ないでしょーーー!!とだけは確かに思った。脳内処理が追い付かない内に、頭上からまたすぅすぅと規則正しい寝息が聞こえる。えええまた寝ちゃったの?!ちょっとちょっと、寝るなら離してよーーー!!!
気持ち良さそうに眠るレッドとは対照的に私は、
腕から抜け出そうと、
落ち着かない心臓を宥めようと、
上がりっぱなしの熱を沈めようと、
レッドにこうされるの嫌じゃないかもという邪念と。
あらゆるものと格闘して、レッドが目を覚ます頃にはくたくたになっていたのだった。
※ただしレッドのみ