お葬式


※死ネタ注意



(六つ子)


今日、松野家のご兄弟の1人のお葬式が行われました。

いつも明るく、兄弟たちの愛にも恵まれ、両親からも近所の人々からも信頼され、大切に大切に育てられてきました。彼の遺影の前には、5人の兄弟が涙を堪えて立っています。みんなお揃いの真っ黒な喪服に身を包み口を噤んで悲しそうな表情をする彼ら。いつも立っているアホ毛はワックスで整えられたようで誰1人アホ毛は見られません。そう、今の彼らは誰が見ても誰だか分からないくらいに同じ顔でした。
彼らは幼い頃から入れ替わりで遊んではイタズラばかりしていました。彼らが本気を出せば、両親も彼らの可愛い幼なじみでさえ区別ができないほどそっくりでした。

葬式場の後ろの方では、亡くなった彼の死を惜しみながら近所の方々が涙ながらに話をしています。


「今回亡くなったのは長男のおそ松くんらしいわね。あんなに弟想いの彼が亡くなったなんて信じられないわ。」
「あら?おそ松くんは生きてるわよ?一昨日赤いパーカーの男の子が商店街を歩いてたもの。私はカラ松くんが亡くなったって聞いたわ……お買い物で荷物がいっぱいだった時、彼が手伝ってくれたわ。あんなに優しい子が亡くなるなんて……」
「何を言うか。次男坊はこの前ワシの庭掃除を手伝ってくれたぞ。亡くなったのは三男坊じゃろ。……しっかりしながらちゃっかりしとる所がワシの息子を思い出すわい。」

ご近所さんの話の中にまたまた近くの主婦やご老人、さらには若者が混ざっていきます。

「チョロ松兄ちゃんはぼくこの前みたよ!はやく走る方法をおしえてくれたんだ!……死んじゃったのは一松兄ちゃんだよね?ママもパパも悲しそうだった。一松兄ちゃんはネコちゃんと仲良くなる方法おしえてくれたんだよ……」
「亡くなったのが一松くん?そんな訳ないわ。だってこの前いつものように野良猫に餌をあげていたもの。亡くなったのは5男の十四松くんでしょう?いつも笑顔で元気だったのにね……もう彼の笑顔が見れないなんて悲しいわ」
「そんな訳ないと思いますよ。昨日いつものように河原で彼が元気に野球をしていたもの。亡くなったのはトド松くんよ。主人と囲碁をしていてくれてねぇ。孫が亡くなったようだと主人も嘆いてるわ……まだ若いのに可哀想に」
「やだ、何言ってるのよ!トド松くんはつい最近私と友達とショッピング行ったよ?写真だって撮ったんだから!」

その場の空気がスウっと冷えていくのが分かります。誰ひとりとして嘘はついておりません。みんな自分が見たまま、聞いたままを述べているだけなのです。

みんな、遺影に目を向けます。成人式の日に撮られたその写真は初々しく、そして恥ずかしげです。誰が誰であるかまるで検討もつきません。
そこで、ご近所さんたちは彼らの両親に話を聞いてみることにしました。

「松野さん、大変失礼で申し訳ないのですが、亡くなったのは何番目の御子息なのかしら?」

あるご婦人のその言葉に、松代も松造も顔を蒼くして俯きます。

「わから、ないのよ。」

松代の震えるような声が、妙に反響しました。

「わからない?」
「ええ、見てもらったほうがきっとわかりやすいわ。……わからないの」

松代は松造に確認を取るかのように視線を向けます。松造が頷くと松代は顔を上げて恐る恐る口を開きました。


「おそ松」

松代の声に5人の全員が振り向いて答えます。

『どうしたの、母さん!』

近所の人々はその異様な光景に騒然とします。

「カラ松」
『なんだいマミー?』

「チョロ松」
『なに?母さん』

「一松」
『……なんか用』

「十四松」
『はいはいはーい!どうしたのかーさーん!』

「トド松」
『なぁにー?母さん!』

顔も、声も、仕草も。5人が決してズレることなくぴったり同じです。
"異常"
その言葉がぴったりと当てはまるような空気に包まれています。まるで、いなくなった誰かを自らで補うかのように彼らはぴったりと同じなのです。


__同じ顔が六つあったっていいよな!

__6倍じゃなくて6分の1


彼らの異様なまでの兄弟への信頼、執着。
欠けた一つを補う行為を言葉無くしてやってのける彼ら。やはり、見えない何かで繋がっているのでしょうか。



さてさて、ここでひとつ。


遺影の彼は誰でしょう?


欠けたひとりは誰でしょう?


かんがえるのが怖いって?いえいえ、考えくださいな。そんなに蒼い顔しないで。


"一生全力モラトリアム"


ポップなこの言葉は、酷く重たい意味なのかもしれませんね。







ここで、皆さんだけにスペシャルヒント。



「おそ松でーす」

『フッ……カラ松』

「どうも、チョロ松です」

「一松」

「デゥーン!十四松ぅぅ!!」

「やあ、トッティだよ!」


さぁて、誰でしょう?

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