まあるい世界に溶けてゆく

そっと彼女の手を取って自分の頬にすり寄せる。白くて細くて綺麗な手。そして彼女ができて初めて知った。女の子の手はこんなにも柔らかくて儚くて壊れそうなものだと。僕はそんな彼女の手が好きだ。僕の背中をトントンしてくれたり、背伸びして頭を撫でてくれたり、愛おしげに僕の頬に触れてくれる。僕は彼女が大好きだ。

彼女の手を頬から離して両手で包み込む。どんな顔してるのか気になって、覗くようにして彼女の顔を見てみると恥ずかしげにほんのりと頬を染めていた。真っ黒の目は潤んで揺れている。ちょこんとついたさくらんぼ色をした唇は羞恥で少し震えている。そんなちよこを楽しみながら爪先にそっと唇を落とすと、ちよこはブルッと少し震えて体温を上げた。
ささやかに塗られたグロスが、彼女の白い肌に映える。手にキスしただけでこんなになっちゃうんだったら、口にしたらどんな顔するんだろ。欲望のような、興味のような、普段の僕なら到底考えもしないことが次々と浮かぶ。スルリと手と手を絡ませると、我慢ならなくなったのかちよこが口を開いた。

「ちょ、チョロ松くん……ちょっと恥ずかしい。」
「ん、ごめんね。」
「ご、ごめんっねっ、て……え、やめてくれな、」
「うーん。やめ、ないかな。」
「あ……やめないんだ。」

「わかってたけど。」ちよこはそう言うとペロ、と真っ赤な舌を出して子どもみたいに笑う。ちよこは僕がちよこの手が好きなのを知っててこんなこと言うんだから困る。
恋人つなぎされた手を口元に持っていき、またキスをする。ふにふにとして柔らかくてクセになる。これから兄弟喧嘩で変態なんて罵られても反論できないくらい今の僕はきっと変態じみてるだろうな。
ちよこは空いてるほうの手で僕の髪に指を通す。それがすごく心地よくてちよこの手に身を委ねる。向き合う形で彼女の肩に頭をポスンと落とす。首に僕の髪の毛が当たっているのか、少しこそばゆそうにちよこは身をよじらせた。

顔を少し動かして視線を上に向けると、ちよこの唇が目に入る。手にキスは出来ても唇はやはりハードルが高い。変だろって思われるかもしれないけどそうなのだ。クソ童貞とでもなんとでも言え。ほんとそこのところは察して欲しい。
悶々としていると、ちよこがいきなりこっちを向いたので目が合った。もう、目と鼻の先に彼女の顔がある。少しでも動けば唇だって触れそうだ。ぐいんと高まる体温に欲求。悟られたくはないけど彼女はお見通しに決まってる。

ちよこのぷるりとした口がキュッと弧を描いた。

「ねぇ、初恋はレモンの味って言うじゃない?」
「え、あぁ……まぁね。」
「じゃあさ、初キスはどうだと思う?」

意地悪そうにというにはあまりに恥ずかしげに、恥ずかしそうだといえばあまりに自信ありげに彼女は言った。そんなくせに、顔は真っ赤な彼女が可愛くて仕方ない。ちよこの髪を撫でてそのまま頬に滑らせる。

「じゃあさ、試してみる?」

彼女の返事を待たずにそのままくちづけた。


まあるい世界に溶けてゆく


片手は彼女と手を繋ぎ、もう片方では彼女の腰を引き寄せた。レモンの味なんてしなかったけど、柔らかいその感触に僕はたしかに昂りを感じた。グロスを舐めるように彼女と口づけを交わす。女の子に関して己の欲望に人一倍弱い僕は貪るように彼女を求めた。ごめんね、少し乱暴で。ちよこのとろけた表情に、より一層熱は高まった。
僕らの甘い息は部屋に響いて消えていく。全てが熱くて甘くて誘っているみたいに感じる。

「溶けちゃいそうだね。」
「……うん」

キスの隙間にそう言って笑った彼女に僕は同意せざるを得なかった。





何年後もずっと、この幸せを君と見ていたい。僕の隣でふわりと優しく笑っているのは君がいい。

おこがましいかもしれないけれど。

__願わくば、君のその美しい手に、僕の贈るリングが輝く夢を……。


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title by. 誰そ彼


20161008

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