夕立 / たつみ
「降られてしまいましたな」
「はい…濡れちゃいましたね」
今日はにわか雨の注意喚起も無かったように思ったのですが。夕食に向かう道中に急な雨に降られて、近くの軒下に避難した。思ったよりも濡れてしまい、これからお店に入るのも躊躇われてしまう。彼女に声をかけようと視線を向けると、こちらを丁度見ていたのか自然と視線が絡む。―私の家、近いので来ませんか。小さくそう言った彼女の言葉を噛み砕くのに、驚くほど時間がかかった。
「巽くんだから、言ってるんだけど…」
咎めようとした言葉を飲み込む。彼女の勇気を無得にするわけにはいきませんから…というのはずるい言い訳でしょうか。
prev top next
ALICE+