恋を知れ!
恋を自覚する
【エース】
「おい、もう避けんなよ」彼の横を通り抜けようとした私の手を掴んで、少し不機嫌そうに彼は言う。「別に、避けてない。」「避けてんだろ。」「そんなことない。離して。」「そんなことあんだろ…」だって、避けずにはいられないじゃないか。前まではこんなことなかったのに、最近の私はおかしい。エースのことを考えるだけで顔に熱が集まってきて、まともに話もできそうにないんだから。「おれ、何かしたか?」「それは、違う!」彼の不安げな声に思わず顔をあげる。ぱちりと彼と目が合う。その瞬間掴まれてる手から、合わさった視線から、どんどん熱が全身に広がっていく。「…真っ赤じゃねェか。」「うるさい、見ないで。」赤くなる私に驚いたようにエースは目を瞬かせる。ポカンと開いてた口元を締めると一歩、私に近づいた。「なァ、何でおれのこと避けんの?」「聞かないで。」「聞きてェ。」「やだ。」きっと全部バレてしまったのに、それでも口には出したくない。普通の仲間だったのに。それなのに、突然おかしいじゃないか。体格も、手の大きさも、声の低さも何もかも意識したら止まらなくなって、突然エースがただの仲間から男の人になって。どんどん話しづらくなっていった。彼の影が自分に差していることすら、恥ずかしく感じる。「なァ、そのままおれのこと好きなれよ。」「…へ?」「そのまま、おれに恋してくれ。」彼の顔も、真っ赤だった。
【サボ】
「サ…参謀総長」「なんだ?」呼べば当然振り返る。革命軍に入った頃に彼を参謀総長呼びにしてからずっとこのまま。不便はないけど、彼を名前で呼んでみたいな、なんて思って呼ぼうとしてはこうして怖じ気付いて、数ヶ月が過ぎた。「こらァ!サボくん!」なんてコアラちゃんが彼を叱っているのを見る度に、普通に名前を呼んでいることが羨ましいと思った。「このあと仕事あるのか?」「もうないかな。参謀総長は忙しいでしょ?」「まァな」「あ、サボろうとしてる?コアラちゃんに言うよ」「ちゃんとするから、やめろって」「手伝おうか?」「じゃあ、お茶でもいれてくれよ」「はぁい」トレードマークの黒のハットを脱いで、くぁ、とあくびをする。少し抜けた姿が見慣れなくて、お茶をいれてくると告げて踵を返す。背後でドアが開き彼が自室に入る音がした。「…サボくん」背を向けたまま、ぽとんと口から溢す。やっぱり照れくさい。暫くは名前で呼べそうにないな。…お茶をいれて、彼の部屋のドアをノックして入ると、机に向かって仕事をしている彼がいた。「真面目な参謀総長さん、お茶をどうぞ。」「…なァ、呼ばないのか?」「ん?」「さっきみたいに、おれのこと名前で呼ばないのか」「な…?!」「もう待ち疲れたんだ、呼んでくれよ」バレていた。ペンを置き、ニヤリとして私を見上げる彼。分かってたくせに知らないふりをしてたなんて、ひどい話だ。「サボくん、好き」「…え?」そこまでは知らなかったでしょう?ふふ、してやったり。
【サンジ】
「サンジくんは、女の子みんな好きなの?」「…もちろん好きさ!みんな砂糖菓子のように甘くて愛らしい!君も好きだよ、プリンセス。」「んー…。」「ご機嫌ナナメかい?」サンジくんはみんなに優しい。それはいいところだと思う。でも女の子に嬉しそうに寄っていく姿に、最近何故かモヤモヤしてしまう。少し唸ってなにも言わなくなった私に、彼は甘いお菓子を差し出して「機嫌をなおしてくれないかい?」と困ったように言う。「…ごめんね、機嫌が悪い訳じゃないの。ただ、ちょっと苦しい。」「体調が悪いのかい…?!チョッパーを…」「待って、ちがうの。」彼の優しさが既に甘くて、無意識にモゴモゴと口を動かしてしまう。「皆じゃなくて、私だけがいいなぁって思ったの。」「…どういうこと?」「サンジくんが優しいのは、素敵だと思うけど、私以外の子にも優しくしてるのを見たらやだなって、思う。」サンジくんは私の前に静かに座ると、なにも言わずにただこちらを見つめる。「嫌な女だなって、思うけど。それでもモヤモヤする。」「…それって、その、嫉妬してくれてる?」「嫉妬…?」「その、恋とか…。」サンジくんが発した恋という単語に、急に心臓がドキドキしてくる。どろどろした気持ちも、彼と話すときのあたたかい気持ちも、全部恋のせいだと自覚した途端ぶわっと顔が紅潮する。「そんな顔されたら、期待しちまうなァ。」彼はへにょりと眉を下げて笑った。
ショートケーキ行進曲
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