ごめんね、ハニー



ごめんねハニー


【エース】

「ごめんな、ハニー」「…ん?」聞き慣れた声に聞き慣れない単語。振り向けば、そこにはバツが悪そうにしているエースがいた。「それ、誰に教えてもらったの。マルコ?サッチ?」「どっちも。」「もうバカ、面白がられてるんだよ。」「でも、絶対反応してくれるし、許してくれるって言ってたからよォ…」「確かに、反応しちゃったけど…」頭を掻いて視線を逸らすエース。私の不機嫌の原因はエースが私のお菓子を食べたことだった。しかも、これは一度目なんかじゃない。今度こそ許さないから!と捨て台詞を吐いて今までずーっと彼を知らんぷりしていた。「怒っていいから、もう無視だけはすんなって…」「エースが悪いんだからね。これで何度目なの」「えェ〜っと…わかんねェ」「もう!反省してるの?!」「してる!してます!」焦ったように腕をぎゅう、と掴んできた彼の手を振り払う。顔を逸らすように俯いて膝を抱えて座り込んだ。私に合わせるようにエースも座ったような気配がする。「おれ、こういう時どうしたらいいかわかんねェから聞き回ったけど、結局それもお前を怒らせちまってるんだよな。でもおれ、お前と話してェよ」「…ん」「なぁ、次の島一緒にまわろうぜ。二人で美味しいもん食いにいこう。ダメか?」少し情けない語尾の彼が可愛くて、もう許してあげようかなって思ってしまうんだから、私は大概彼に甘い。顔を上げて、ふっと頬を緩める。「食い逃げは、嫌だからね。」「当たりめェだ。」う〜ん…本当かなぁ。


【サボ】

「分かってるよ。任務だよね。」「あァ。」「でも、嫌だって思っちゃったの。」「そうだよな。」「ごめんね。私、面倒くさくて。」「面倒なんかじゃねェよ。」今日は任務の日だった。帰って来た彼からは女性物の香水のキツイ香りがした。顔をしかめた私を見て、すぐにシャワーを浴びてくれた彼だけど、私の気持ちは晴れないでいた。シャワー後の、彼の濡れた髪をタオルで優しくつつむ。仄かに香ってきたのはいつもの彼の匂いで、ほっと安堵した。彼は仕事を頑張ってるのに、私はこんなことで嫌に気持ちになるなんて本当に情けない。ぐっと涙を堪えて、彼の髪をタオル越しに撫でた。このまま、私だけのサボくんになればいいのに。…突然、サボくんがくるりと振り向く。「…?まだ、髪の毛濡れて…」「ごめんな、ハニー。」私の手からタオルを奪って、恋人繋ぎのように指を絡める。空いたもう片方の手の指先でちょん、と控えめに私の頬に触れて彼は言った。彼は今、私だけを見ている。その事実だけで私の口角は上がってしまいそうになる。「サボくん。」「ん?」「ハニーは、私だけ?」「お前だけだよ。」「それ、任務でも私以外には言わないで。」「…言わねェよ。お前だけ。」ずるい人だ。私が喜ぶ言葉を何もかも分かってて、こんな時に言うんだから。お前だけって言葉で嫌なこと全て帳消し出来てしまう私は、きっとすごく単純な女なのだろうけど、彼が笑ってくれるならそれでいいや。

【サンジ】

「どうして無茶するの。」「美しい君が怪我をしてしまうと思ったら、自然と体が動いていたんだ。」「私だって、護身術くらいある。」「それでもおれが守りたかったんだ。」サンジくんが私を庇って怪我をした。結構大きな怪我で、今は医務室に寝かされている。巻かれた包帯を撫でると、彼は少し居心地の悪そうな顔をした。護身術…だなんて大口を叩いたけど、サンジくんに守ってもらわなければ、彼の怪我よりもっとひどい怪我を私は負っていたことだろう。それでも、サンジくんが不甲斐ない私のせいで大怪我をしたことが、とても悲しくて辛かった。「私のせいで、ごめんなさい。でも、私だってサンジくんに怪我してほしくないよ。」「君はなにも悪くない。…泣かないでくれ。今は涙を拭えないんだ。」「泣いてないよ。」「泣きそうだ。」彼は私をいつも守ってくれる。でもそれは、女の子だからだ。きっとそれ以上でも以下でもない。私にとって、彼はただの仲間じゃないから。だから、守ってもらうと無駄に期待してしまうから苦しい。怪我をしてまで守ってくれたことが嬉しいなんて、こんな酷いこと彼に一生知られたくない。「ごめんね、ハニー。」「サンジくん。守ってくれてありがとう。…でも、あまり心配かけないでよね。ダーリン。」「…?!あ、だ、ダーリンって?!」「うるさい。静かに寝てなさい。」サンジくん、早く元気になってよね。そしたらあなたが知りたいこと全部教えてあげるから。それまでは私の言葉に惑って、困って。

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