08
「そういえばアリスはもう王女に会って来たの?」
「王女?」
前にトキヤが少しだけ言っていた気がするけれど、あまり詳しくは知らない
「まだ会っていなかったのですか?早く顔を見せに行った方が良いと思いますが」
「あの...さ、王女ってどんな人?」
私の言葉に全員が驚いた表情を見せる、何この状況
「アリス...お前と王女は幼馴染だろう」
「そうですアリス、二人はいつも歌でワタシ達を楽しませてくれたじゃないですか!」
「アリス、忘れちゃったの?」
次々と浴びせられる言葉に何も言い返せない、何故だろう、私の夢のはずなのに、そうじゃないみたいな不思議な感覚。それにトキヤが気づいてくれたのか、訝しげながらも口を開く
「あなたは...子どもの頃の記憶を無くしてしまったのですか?」
「そ、そんなことないけど...」
記憶はあるけれど、私はそもそもアリスじゃない!でもこんな空気の中それを言い出す訳にもいかず、俯くことしかできなかった
「ねぇアリス、みんなアリスが王女と一緒に歌っていた曲大好きなんだ!」
「そうだ...その曲があれば思い出すかもしれんな」
「いい案ですね、セシルさん楽譜を出してくれますか?」
トキヤがセシルに言うと、彼は「Yes,マイプリンセスの為なら」と微笑んで胸に手を当てる。数秒後、眩い光に包まれて楽譜が表れた。っていうかこの世界、ほんと何でもアリなのね
「アリス、早く見てよ!」
音也が急かすように楽譜を差し出す。五線譜の上で踊る音の数々、頭の中でメロディにするとあることに気がついた
「これって―...っ!!!!」
―「なまえちゃん、一緒に図書館行きませんか?」
「いいよー何か探し物?」
「実は昔読んだ絵本を急に読みたくなってしまって」
子どもみたいですよね、と笑う春ちゃん。きっと純真な心があるから貴方の曲はキラキラと輝いているんだね
「そっか...なんて本?」
「不思議の国のアリスです」
何てタイムリーなんだ