家に着き部屋着に着替え、晩ご飯の支度もある程度済ませたところで家のチャイムが鳴る。ただ家に遊びに来た訳ではない、泊まりなのだと先ほど漸く思い出して緊張していた。なるべく悟られないようにガチャとドアを開けば、別れた時に見た制服とは違いラフな格好をした京治が立っていた


「どうぞ」

「お邪魔します」

「もうすぐご飯できるから、ソファに座って待ってて」


京治の私服姿が普段より一層格好良く見えてドキリとしたけれど、それよりも部活が終わって何も口にしていない自分達の為に早く料理を仕上げよう、とキッチンへと戻る。ずっと痛いほどの視線を感じているけど....見過ぎではないでしょうか。キャミソールに半袖のパーカーを羽織って、ショートパンツよりは少し長めのものを履いた格好はそんなに変だったのか


「ねえなまえ...その格好さ、」

「ただの部屋着だけど変かな...」

「変じゃないけど...それでコンビニとか行ったりしてないよね?」

「えっ、行くけど」

「......はぁ、」


頭を抱えて深い溜息をついたかと思えば、無表情でつかつかとこちらに詰め寄ってくる。待って、京治の顔がちょっと怖いんですが


「なまえ」

「な、なんでしょう...」

「襲われたいの?肌、見せすぎ」


かぷりと肩を噛まれ、いきなりの刺激に小さな悲鳴をあげてしまう


「俺以外の奴にこういうことされたいの?」


するすると太ももを撫でる手に、もしかしてこれは不味い状況なんじゃないかと頭の中で警告音が鳴った。いつになく京治の怒気を含んだ目が本気だ、早く謝ってしまったほうが身の為だ


「......ごめんなさい、気をつけ、ます」

「......俺の前ならいいけど、他の男の前で油断しないで」


そう言うと京治は困ったように笑いながら私をぎゅっと抱きしめた。ごめん、怖かった?なんて彼が反省しているのもなんだか可笑しくなって、大丈夫だよと言えばよかった、と安心したように笑った

そろそろ本気でお腹が空いてきた。もうじきスープが良い具合に煮込まれているだろう。用意しておいたサラダと器にスープを入れ、メインのオムライスを机に並べる


「旨そう...」

「見た目はね、味の保証はしないって言ったでしょ」

「いただきます」

「はい、どうぞ」


京治が一口食べるのを見届けてから、私もいただきますと手を合わせてスープに口をつける。私の好みで野菜をくったくたに煮込んだけれど、果たして彼の口には合ったのだろうか...と心配をよそに黙々と食べる姿を見てもう考えるのはやめた


「ごちそうさま、すごく美味しかった」

「ふふっ、よかった」


何も残っていない器に思わず微笑む。お皿を流しに持って行こうと立ち上がると、京治も手伝うよと同じく立ち上がった


「京治はお客さんだから座ってていいよ」

「いや、ご馳走になったしそのくらいやらせてよ。あとなまえお風呂まだでしょ、俺が片付けとくから入ってきなよ」


京治に任せっきりで良いのかとも思ったけれど、時計を見て、部活が終わってから買い物、料理と随分と時間を使ってしまっていたらしい。ほら、と急かされお願いしますといえば、いいよと笑って返事をくれた



2016.03.26