ぽかぽかと陽だまりの中に浮かぶように、記憶が蘇る
私はあの眩しいくらいの笑顔ではなく、バレーに打ち込む姿に胸を鷲掴みにされた。へらへらと誰にでも向ける顔ではなく、信頼している仲間とそれをまとめる責任者、そして周りからの羨望の眼差しに応えようと努力する姿。それを決して悟られないようにするところも...たまたま体育館を通りかからなければ知ることもなかったのかもしれない。
「みょうじさん昨日体育館の近くにいたよね、誰か見に来てたの?」
「ううん、ちょっと用事があって」
「そっか...てっきり俺のこと見に来てくれたのかと思ったのに」
揶揄うように言う彼に誰にでもそういうこと言うのやめた方がいいよ、なんて言えばぽかんと口を開け唖然としていた。きっと彼の周りの女の子はきゃあきゃあと騒ぎ立てるのだろうけど、生憎私はそんなタイプではない
「そんな言い方してると、みんなに勘違いされるよ」
「えっ、あ、違う!えーっと...みょうじさんが俺のこと見てくれたら嬉しいのになって」
「あはは!それみんなに言ってるでしょ?でもちょっとドキッとしちゃった」
「みょうじさん酷いよ〜誰にでも言うわけないじゃん!」
「えーほんとに?」
少しだけ熱を持った顔を誤魔化すように笑えば、釣られたように及川くんも笑った
「ねえみょうじさんって彼氏いる?」
「もう、さっきから及川くんチャラいんだけどどうしたの?」
教室の端の方で松川くんと花巻くんが腹を抱えてゲラゲラと笑っているのが見えた。その隣には岩泉くんもいて、口元を押さえて笑っている。あぁ、仲が良いんだなと微笑ましく思う
「待って、俺より岩ちゃんの方が気になる!?」
「えっ...まぁ、うん。友達の彼氏だし」
「あっ、あー...そういうこと!じゃあ俺にもまだ望みはあるよね!」
獲物を狙うような鋭い視線に、じわりと汗をかいた。どうして私を、なんて思う暇もなく及川くんからのアピールは毎日続いた
そんな話から私たちが付き合うまではそう長くかからなかった。いつの間にか彼を見ているだけでなく、支えたいと思うように変わっていったのだ。けれど"及川徹"と付き合うことは一筋縄ではいかない。覚悟していたはずのそれは、じわじわと足元を崩していった
2016.05.05
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