「何があったのか詳しく聞かせてもらおうか〜」

「さあ吐け!吐け!」

「うぅ......特に何かあったわけじゃ...」


部活に来た私と赤葦の様子を見るなり、かおり先輩と雪絵先輩に部室へ連行される。この2人には私の気持ちを知られているだけに何かを察するのが早かったみたいだ。特に雪絵先輩は「なまえちゃんさ〜赤葦のこと好きでしょ〜」なんてあのおっとりした口調ではっきりと言うものだから、あの時は随分と焦った


「ほらほら、早く言わなきゃ部活始まっちゃうよ〜」


そう言った雪絵先輩はとても楽しそうで、かおり先輩も同じ表情をされている。これはもう逃げられない


「あ、の...赤葦って、好きな人いるんでしょうか...」


恥ずかしくてぽつりと呟いたこの声を先輩方はしっかりと聞き取ってくれていたようで、この質問にひどく驚いたような呆れたような....え、呆れられてる?


「なまえちゃん本気でそれ言ってるの!?」

「マジか〜赤葦不敏なやつ〜」

「えっ?え、どういうことですか...?」


混乱したままの頭で聞くとニヤリと笑ったかおり先輩が言った


「よし、じゃあ今日のなまえちゃんの仕事は得点係とスコア付け、途中で私と交代してボトル洗いね!」

「はい、わかりました...けど...?」

「それで今日は意識して赤葦の目線を見てみな。私たちから言うことはできないけど、きっと気づくことがあると思うから」


赤葦の目線を見る、目を合わせるのではなく目線を。うんうんと悩んでいる内に先輩方に手を引かれ部室から部活へと連れ出された。ここまできたら拒否権はないようだ






バチッ


「......あれ?」


バチッ


「......えっと、」


気のせいでなければ赤葦のトスでスパイクが決まった時、赤葦と目が合っているような感覚になる...私の後ろは壁だし、あくまで勘違いでなければ...という感じだけれど

(顔、赤くなってないかなぁ)

部活中の赤葦はそれはそれは格好良い。梟谷には優秀な選手がたくさんいるけれど、私からは惚れた弱味とでも言おうか、赤葦が一番に見えるのだ


「なまえちゃん、ボトルお願いしていい?」

「はい!洗ってきますね!」


籠にいっぱいのボトルを持って体育館を後にする、その前に少しだけ後ろを振り返ると




バチッ


「............っ!」


やはりまた目が合ってしまう

これってもしかして?なんて自惚れてもいいのだろうか、先輩達が言っていた言葉が頭の中でもう一度繰り返される


水道に蹲る私の顔は、今日の夕日と同じくらい真っ赤になっているかもしれない




2016.03.09