次の日、朝練が休みで本当に助かった。私は授業開始ギリギリに教室に入るようにして、極力赤葦との接触を避けた...と言っても隣の席である以上最低限のことは話すのだけれど。それでもいちいち赤くなってしまうこの顔はどうにかできないものか


「なまえ〜お弁当食べよっ!」


どうにかお昼になり美月と合流しようとしたところで、後ろから腕をぐいっと引かれる


「山本さん、今日みょうじのこと借りていい?」

「いいよ〜いってらっしゃい」


赤葦と美月はグルなんじゃないかと思うほどに、私の意見など聞かずすんなりと許可されてしまった


「みょうじ、屋上行くよ」

「なん、で...」

「返事聞いてないから」


何の、なんて言わずしてもわかるだろう。昨日からバクバクと鳴り止まない心臓がより一層音を大きく立てていた

屋上のドアを開くとそこには誰もおらず、ただひたすら青い空がギラギラとした太陽と共に浮かんでいる。快晴だなあ、なんて一瞬違うことを考えていたら、いつの間にか壁際に追い込まれて顔の横には赤葦の手が置かれていた...これが所謂壁ドン...みたいなやつかなぁ


「それで、返事聞かせてよ」

「あの、ちょっと近くない...かな?」

「好きな人の近くにいたいからね」

「っ...!赤葦っ、そんなガツガツしてるイメージなかった...よ」

「みょうじのことになれば別だから」

「なんで...?」


昨日の告白を受けてこんなことを聞くのは少しズルかったかもしれない、けれどもう1度聞かなければ私もうまく返事をできないでいた


「好きだから、みょうじのこと」


2度目である彼の告白にふにゃりと力が抜けて座り込んだ。合わせるように赤葦もその場にしゃがんで「返事は?」と催促される。もう、言ってしまうしかない


「わ、私も、好きです...」


私の言葉に赤葦はふわりと笑いよかった、と呟いた。恥ずかしいけれどなんとなく目線を外せないままでいると、ほんの一瞬唇に柔らかい感触が当たった


「.........!!」

「ねぇ、もう一回いい?」

「う...ん、いいよ」

「好きだよ、」

「んっ、んんっ」




今はまだここまで、と唇が離れていく。恥ずかしくて手で口を覆うと満足そうにニヤリと笑い、それが赤葦にとてもよく似合っているから腹立たしい。最初から翻弄されまくっていたこの恋は、肉食彼氏によってさらに翻弄されるのだった




2016.03.11