『私、ダイエットしようかな…』
「なんで?どうしたの?」
『だってみんな細いのに…、私ぽっちゃりだし……』
「なまえは別に太ってないじゃん」
「そうそう、てゆうかなまえのふにふに好きなのに〜」
『ちょ、やめてよぉ〜』

うりゃうりゃ、と友達が私の二の腕を触ってきた。皆はこの二の腕を気持ちいいとか、好きとか言うけど、それは自分じゃないからそんな事言うんだよ。皆は細いのに私だけむちむちだし、私だって頑張れば……とか思うんだもん。


「なまえチャンはさァ、今のままが良いんじゃナァイ?」
『……え?』

突然隣の席の荒北くんが声をかけてきた。さっきの休み時間の話を聞かれてたんだ……。
けだるそうに、頬杖を付いてこっちを見る彼は、少しだけ楽しそうでからかわれてるのかもしれない。
出来たらスルーしたいのに、ゆるい先生の授業で教室は、がやがやとしていて無視なんて許してはくれなさそうな状況だ。
……そもそもどう反応すれば良いか分からない。今まで荒北くんに話しかけた事もなければ、話しかけられた事もないのに、なんで今…? からかわれてるようにしか思えないよ。

「ふにふに、良いじゃナァイ」

荒北くん細い目を更に細めて笑った。荒北くんが笑うのとか初めて見た。

『で、でもデブってことじゃん……』
「デブじゃねぇよ。硬いより、やわらけぇなら良いじゃね?」
『でも…、』
「ちょっと触らせてくれよ」
『え?!いやいや、それは……』
「さっき触らせてたじゃん」
『だだってあれは……友達だし、女の子だし』
「俺はダメなのかよ?」
『いや……まぁ…うん』

今笑ってたはずなのに、私が断ったのが気に喰わないのか、一気に纏うオーラが怖くなった。
こわい……!元ヤンってやっぱり本当だったんだ……どうしよう!
それ以上何も言わず、ただ私をじっと睨んでくる荒北くんと私は、まさにヘビに睨まれたカエル状態だと思う。本当に怖いというか、怖くて目を逸らせない。

『あ、あの……』
「なんだヨ」
『……ちょっとだけなら』
「あァ…?初めからいいならそう言えよな」
『ごごごごめんなさい……!』

顔はまだ怖いままだけど圧迫感のオーラは緩くなって、少しだけホッと胸をなでおろす。
それから改めて荒北くんを見れば、意外と整った綺麗な顔をしているんだなぁ、と的外れな事を思った。そもそも怖いイメージが強すぎて、こんなにまじまじ荒北くんの顔を見たことなんてないんだから、知らなくて当たり前か。

『きゃ、!』

がしっと手首を掴まれて、そのままもう一方の手で二の腕を揉まれた。

『……荒北くん?』
「………」

もみもみと、友達よりも少し強い力で揉まれて変な感じがする。
とゆうか、少し俯き加減でこっちに身体を向けた荒北くんの表情は見えなくて、ずっと無言でちょっと怖い。
え、なに……もしかして怒ってる?

『あ、荒北くん……!』
「……ェ…」
『え、なに?』
「コレやべぇ…!」

そう言いながら、顔を上げた荒北くんの表情は見たこともないくらい楽しそうだった。
とゆうか、荒北くんってこんな顔もするんだ…。

その腕、そのままで

「なまえチャンよォ、今日も揉ませてくれナァイ?」
『ちょっと、人に聞かれたら勘違いされちゃうからやめてよ…!』
「頼むヨ……ってゆーかなまえチャン、ダイエットしたらダメだからな」
『えぇー!?』

ALICE+