スタートの時とは打って変わって、力強くゴールをした姿を見て、堪えていた涙が止まらなくなった。嗚咽まで出てきたら息が中々出来なくて、苦しくて、早く傍に行ってお疲れ様って言ってあげたかったのに、足も動かない。
『迅く、ん』
良かったね、ちゃんと最後まで走れたんだね。無理してでもレースに出て良かったね、迅くん。
ようやく辿り着いた総北のテントの前には誰もいなくて、どうやって入れば良いか迷ってると、巻島くんが出てきた。
『あ、…巻島くん』
「みょうじ、来てたのかヨ」
『う、うん……』
目を紅くして、いかにも泣きましたって顔の私を見た巻島くんは、一瞬ギョッとして、それから呆れたように眉をいつものように異常に下げてから、中に入るよう促してくれた。
「俺らちょっと出てくるからヨ…」
そう言って、1年生3人と巻島くんがテントから出て行けば、中には金城くんと2年生、そして椅子に座った迅くんだけがいた。
『迅くん』
「……なまえ見に来てたのかよ」
『うん、迅くん驚かそうと思って。でも、昨日来れば良かったね。せっかくグリーンゼッケン取ったのに見れなかったや』
「今日はひでぇ姿見せちまったしな」
『そんなこと…、ないけど、』
迅くんが自嘲気味に笑うから、そんな事ないよって言おうと思ったのに、また涙が出てきてちゃんと言葉が出てこない。馬鹿、きっと泣きたいのは迅くんだよ、疲れてるのに。
「なまえ、それ何持ってきたんだ?」
『これ?……ハチミツれもん』
「……食べたい」
そう言われて慌てて容器ごとカバンから出せば、動けねぇから食べさせろって笑った。
そんなに無理して食べなくても良いのに、そう呟けば、何か食べないと動けないからって、私を促す。
『迅くん』
「んぁ?」
『美味しい?』
「おう…、疲れた身体に沁みる」
『……良かったね』
「……だな、」
『3日目、皆で走れるね』
「明日もいるのか?」
『ううん、明日はバイトなの』
「そうか……」
『でも、明後日と明明後日は休み』
「ん、」
『だから行っても良い?』
「動けねぇけど?」
『うん、一緒にいれれば良いよ』
迅くんは、少しだけ笑って私の頭に手を置いた。置いただけ。
迅くん、お疲れ様。
まだもう1日あるから、その言葉は心の中で唱えた。
今日頑張った君へ
明日が終わったら、たくさん抱き着くから覚悟しててね、迅くん。