「なぁ」
『どうしたの?』
「ザクと馴れ合ってなまえもザクになりたいん?キモいわ」
『……え?』

皆のドリンクを作っていたら、無表情の御堂筋くんに声をかけられた。
御堂筋くんってよくザクと言う単語を使うけど、多分ニュアンスから感じとるに、雑魚とかそういうのから取ってるんだと勝手に思ってる。
だから、今のは平部員とさっき雑談でちょっと盛り上がっちゃったからサボるなとでも言いたいんだと思う。その点についてはちょっと私に非があるし、正直に謝ろう。

『ごめん、ちょっと話長くなりすぎたんだ、スタート遅くなるもんね。次から気をつけるよ』
「キモいわー。ザクなんかかばって健気にドリンク作っても、ザクはレギュラーにはなれへんよ?」
『何言ってんの、御堂筋くん今日変だね?はい、御堂筋くんの分』

レギュラーになるために皆のドリンク作る訳じゃないのに、今日の御堂筋くんは何が言いたいのかな。たまに御堂筋くんは何を考えてるのか分からないんだよね。

『よいしょ…、と。じゃあ私皆にも配ってくるから』
「……なぁ、ボクに言わせるん?」
『え?なにが?』

皆のボトルを籠に入れて、部室を出ようとすれば腕を掴まれた。
力加減をしてくれない御堂筋くんに掴まれた手首はじわりと痛みがにじむ。

『御堂筋くん?』
「なまえがザクと楽しそうに話すん、嫌や言うとるんや。意味分からんの?」
『……それって、嫉妬とか?』
「察してほしかったんやけどなぁ」
『御堂筋くんが?』
「……何か文句あるん?」
『うっそだー…!からかわないでよね』

あー、もう。御堂筋くんて頭良いし何考えてるか本当わからんわ〜、危ない危ない、騙されるとこだったよ〜

わざとらしく発した私の言葉に御堂筋くんは、遮る事なく黙っていた。
だから振り向くことなく、私はそのまま部室を出る。こういう事に免疫のない私は耳まで真っ赤になってるのが分かって、御堂筋くんの表情を見る余裕なんかもちろんなくて。とりあえずその場から離れたかった。
……冗談、だよね?
そんな、あの御堂筋くんが私に嫉妬?しないしない。あれはからかわれただけだよ。だって御堂筋くんに好きって態度取られたことないし。
信じたら、信じたん?馬鹿やなぁっていつもみたいににんまり笑うんだ。そうだ。
落ち着け私。……よし、皆にドリンク渡さなきゃ。

「ボク本気やで?」
『え?!』

私の心を読んだのかと思うくらいのタイミングで、上から御堂筋くんの声が降ってきた。
とゆうかいつの間に後ろに立ってたんだろう……、そう思って振り返るのと同時に頭を叩かれた。
叩かれたというにはあまりに優しいくらい、ポンと1度だけ。

『あ、あの…』

何か、何か言わなきゃ…と、思ったけど咄嗟に何も言えなくて、そんな私を分かってるのか、御堂筋くんはそのまま振り返ることなく私を追い抜かして行ってしまった。

……これは、反則でしょ…。

気付いてくれんなら、気付かせるまでや
どうしよう、意識してしまう…!わ〜!
(それが目的なんやから、ドキドキしてもらわな困るわ)

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