うずうず。うずうず。
触りたい、触れるだけなら良いかもしれない。いやでも、少しだけなんて我慢できるか分からないし、ダメだダメ。今は邪魔したら、怒られちゃう。

「ん? ずっと何見てんだ」
『ん〜…気にしないで』

日曜日の昼下がり。今日は午前中早い時間の部活だった迅くんは、愛車を洗車していた。今年のインターハイを乗り切る相棒。大切にしているのが、素人の私が見ても分かるから、その時間を邪魔してはいけない。
でも、しゃがんで作業する迅くんの背中は大きくて、引き締まった筋肉がTシャツの薄さから感じとれて、思わず触れたくなってしまう。
しばらく待ってて、という言葉に頷かないで一緒に外まで出てきたのが悪いのかもしれないけれど、久しぶりに2人で会えることに浮かれちゃってた。

「見てるだけで面白くねぇだろ?」
『つまらなくは、ないよ。ただね……しんどい』
「は? しんどいなら部屋で待ってろよ。麦茶出してあるぞ」
『いや、そういう意味ではなくてね、』
「じゃあ、どういう意味なんだ?」
『……触りたい』
「あぁ、触りたいか、そりゃ俺だって……って!なに言ってんだよ!」

見事なノリツッコミで迅くんがこちらを振り向いて。思わず、私は少し笑う。目が合うと迅くんも笑う。思わず一歩踏み出すと同時に、迅くんも1歩こちらへ近付いた。
それを触れても良いという合図とみなして、手の伸ばすと、肯定の意なのか1歩分残っていた距離も縮められて、大き胸板が視界に拡がった。
本当はちょっと触れればいいと、思っていただけなのに、あまりに久しぶりだから欲求不満なだけだったのに、こんなに簡単に受け入れられてしまうと我慢できなくて、胸にそっと抱き着いた。
暑いはずなのに、迅くんの腕の中は温かくて心地良い。帰ってきたあと、にシャワーを浴びていたのに、陽が上りきった外で作業をしていたからか、少しだけ汗ばんでる。私も。
それが全然不快じゃなくて、迅くんの香りが好き。

「急に、こんなところで甘えられると困る」
『……ごめん』

口だけ謝って、背中に回した腕を解かない私に、呆れたかのように溜息が一つ。不安になって顔だけ上げると、困った顔した迅くん。
「ここ、どこか分かってやってるんなら、もう俺も諦めるけどいいのか?」と、小さく耳元で囁かれて、耳からじんわり熱を持つのが分かった。そうだ、ここ、外。しかも、人はいないとは言え人のお家の駐車場…!

『ご、ごめんなさい!』

改めて、今度こそ本当の意味で謝って離れようと身を捩ると、名残惜しそうに腕が緩められた。こんなところでいちゃつくなんて、人に見られてないとしても恥ずかしい!
自覚すると余計に顔も熱くなってきて、倒れそう。思わず頬を両手に抑えたけど、手も熱くてもう身体自体が熱くて参る。

「……本当にもうちょいで終わるからよ、」
『う、うん?』
「覚悟して待っとけよ」
『……っ!?』

私から一歩離れてから、迅くんが不敵に笑った。……ちょっと迅くん、それ反則。もう本当にパンクしちゃうじゃん。ばか。

……それまでに、この尋常じゃない身体の火照りが少しでも治まってますように。

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