『迅くん迅くん〜お腹減ったー!パンないの?パン!』
「しゃーねぇな、ほらよ」
『わーい!やった!ありがとうパンくん!』
「お前人の事パンみたいに言うなよ!」
『ごめんごめん、今迅くんがパンの神様に見えたから!』
「まったふざけた事を…」
迅くんから貰ったクロワッサンをぱくりと、頬張る。するとバターの香りがふわっと広がって、甘さとしょっぱさもまさに絶妙…!
『うっま〜い……しゃあわせだよぉ』
「まったく……たまには買いにこいよな」
『行きたいんだけどしゃ、朝起きれなぁくて、ん、夕方はもうにゃいし』
「食いながら喋んな」
『ん!』
「なまえ最近こねぇな、って心配してたぜ」
『本当…?じゃあ日曜にでも行こうかな〜迅くんメロンパンとクロワッサンとベーグル、売れ切れないようにしといてね』
「ちゃんと午前中か日中くればあるんだからよ」
『ほいほい〜』
丸々一個クロワッサンを食べ切ると、迅くんがパックのコーヒー牛乳を差し出してくれた。
ちょうど、喉が渇いてとゆうかクロワッサン食べたし飲みたいなぁっつ思ってた所なんだよぉ!
『さっすが迅くん!良いお嫁さんになれるわ〜』
「……お前…」
「クハ!本当みょうじは面白い奴ショ」
私たちのやり取りを見ていたのか、現れた巻島くんは可笑しそうに笑って、ぽんぽんと私の頭を撫でた。
迅くんが触れる時は、がしがしと頭を撫でるからなんだか変な感じ…。
「田所っちもこれじゃ大変だな」
「うっせい」
「……ん?どうしたっショ?」
『巻島くんって優しいよね』
「は?」
『いや、撫で方がね』
じーっと巻島くん見つめれば、不思議そうに尋ねられた。
迅くんとは、手の大きさも腕の太さも違うからなのかな。巻島くんのが優しくて気持ち良いけど、迅くんのがやっぱり、
『迅くんのが乱暴』
「うっせーな」
『でも迅くんのに撫でられる方が好き』
「俺のに慣れてるだけだろ」
『う〜ん、そっかな〜』
「そうだろ」
『ん〜、じゃあ多分迅くんのこと好きだからか…!』
「な…ッ!」
「……クハ!」
単純に好きな人になら撫でられて気持ちいいに決まってるか!
「すすす好きって…お前…」
『いやだって迅くんが他の子にパンあげたり、もし彼女出来たからって、今みたく遊んでくれなくなったら嫌だなって』
「………田所っち、良かったな」
『巻島くん!これって好きだよね?!』
「俺かヨ!」
『ん、なんか胸が苦しいとかそういうのはないけど、これは好き?』
「……そうっショ?のが俺も都合良い」
『て、ことで…!迅くんの意思に関わらず!私は迅くんにずっと付き纏います!』
「………」
『迅くん?』
「……しゃーねぇから、お前の遊びに付き合ってやるよ」
がしがしといつもより乱暴に頭を撫でられて、迅くんを見上げると少し頬を紅くして、ちょっとだけ照れてた。
『迅くん!すきー!』
ガバッと抱き着けば、やめろと言いつつも引きはがされる事はなくて、それがまた嬉しくなって、迅くんの広い胸に頬擦りした。
『明日はメロンパンが食べたいな』
「ったく、しょーがねーやつ」
『えへへ』
「……俺のこと忘れてんショ…」
甘酸っぱくない、ただただ甘い
迅くんは胸が痛いなんて起こらないくらい、甘い甘いはちみつみたい!
「確かに田所っちはみょうじに甘いっショ」
『ね〜!迅くん優しいの!』
「恥ずかしいからやめてくれ…」