「なまえ、髪触れっショ」
『う〜ん、また〜?』
「早くしろヨ」
巻ちゃんの部活が珍しくオフで、のんびり巻ちゃんの部屋でくつろいでると、ベッドにもたれ掛かって雑誌を読んでる巻ちゃんが、視線も外さず催促してきた。
しょうがないなぁ、って口ではそう言いつつも私は寝転がっていたベッドから起き上がって、巻ちゃんの後ろに座ってからそっと髪に触れる。
『マッサージしようか?』
「んー、」
ぺらりと、ページをめくるのと同時に生返事ながらも頷いたのを確認してから、頭全体を包みこむようにマッサージを始めると、気持ち良さそうに目を閉じたのが見えた。
『気持ちいい?』
「……気持ちいい」
『ねぇねぇ、そんなに好きなら今度マッサージ屋さん行く? 頭皮マッサージしてくれるとこ知ってるんだ』
「ヤダ」
『え、なんで?』
「なまえにやってもらうから良いっショ」
そう言うと、巻ちゃんはくるりと振り向いて私の脇を掴んで抱き上げられて、そのまま向き合う形で膝に座らされた。
『え、巻ちゃん?』
「そもそも、人に髪触られるのとか嫌いだしヨ」
『そうなの?』
「こういう髪してるからヨ、無意味に触りたがる奴っているんだよ」
『そうだったんだ』
「だからヨ?髪触っても良いのはなまえくらいショ。他は却下」
そこまで言って照れたのか、巻ちゃんは私の返事を待たないで、ぎゅうっと私を抱きしめた。そうやって顔を隠しても、ちょっぴり紅くなっているのが見えて、自然と自分の口角が上がる。
『もう…、巻ちゃんったら可愛い』
「うるせーヨ……」
普段は私が撫でられることの方が多いけど、巻ちゃんがそう言うのなら……私はたくさん触れるよ。
こんなに髪に悪いことしてるのに、さらさらと絡まないこの長い髪に触れても良いのは私だけ。そう思うとそれがすごく嬉しくて、愛しくて、そっと髪に顔を埋めた。
君、髪、独占
『巻ちゃん巻ちゃん、私のも触ってよ』
「アー…はいはい、俺の番が終わったらっショ」
「えー、いつ終わるのー」