そよそよとクーラーから出る涼しい風を扇風機で部屋の中に充満させる。

『はぁ〜……涼しい〜』

大きなベッドでゴロゴロと転がって涼んでいると、ガチャっと部屋のドアが開いた。

「……人の部屋でなにしてるんショ」
『おかえり〜。あ!アイスだ!ありがと〜う』

ようやく現れた部屋の主は、トレイに冷たいお茶とアイスクリームを2人分乗せていた。1人寂しく待ってた甲斐があった〜。

「なまえに持ってけってヨ。いつからいたんだヨ」
『10時くらい?』
「もう3時だぞ…?」
『いいじゃん、私の部屋クーラーないから暑いんだもん』
「扇風機までつけてヨ…」
『温度を上げて扇風機回して両方使いした方がエコらしいよ』
「……全く、」

サイドテーブルにトレイを置いて、ぎしりと裕介がベッドに腰掛ける。

「寂しいなら寂しいって言えショ」
『……部活なんだからしょうがないじゃん』
「はいはい、そうだけどヨ?お前は特別に決まってんショ?たまには我が儘も言えよ」

さらりと、裕介が私の前髪を触れる。
外から入ってきたばかりだからか、いつも冷たい裕介の手が暖かい。冷えた身体にはそれがまた気持ち良くて、そのまま裕介の手を取って自分の頬に当てた。裕介は何も言わずにそれに従って、自分もベッドに横たわった。

『ぎゅって、して』
「ん」
『……たまに我が儘なんてヤダ。我が儘言ったら止まんないもん』
「ん」
『だから、今、我が儘貯金しとく』
「……貯金?」
『そ、後でまとめて使うんだから』
「……そりゃァ、こわいな」
『でしょ』
「……アイス食べねぇのか?」
『今はぎゅうタイムなの』
「そか、」

ぎゅっと裕介の服を掴むと、裕介もぎゅっと私を抱きしめる腕を強くして。裕介のベッドで、裕介の腕の中で、裕介の香りでいっぱいになる。心地好い。
そよそよと扇風機が奏でる音だけが、この部屋の音楽みたいに、私達はそれから暫く何も話さず、放さず、短い時間を過ごした。

わがまま貯金
インターハイが終わったら、私だけが裕介を独占するの。

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