多分、2年に上がってすぐだったと思う。1年の時はほとんど行かなかった購買で、パンでも買おうと行った時に初めて見かけた。人に揉まれながら、プリンを大事そうに持って出てきて。人混みを出た所で一息ついたかのように安心した顔をして、それから嬉しそうに笑った。

最初はプリンなんかであんな嬉しそうに出来るなんて、変わってる、そう思っただけだった。だけど、それから何回も嬉しそうにプリンを買う姿を見かける内に、いや、最初から無意識に探してたのかもしれないけど。多分、好きになってた。だけど、別に付き合いたいとか告白しようとかそこまでは考えなかったし、好きになってもらおうなんて事も思わなかった。だから何もしなかったし、ただ見てるだけだった。
なのに、あの日偶然ぶつかってきた時。少しだけ欲が出て。いつもの癖で、ぼやいたりしても、俺から引いてかなくて、それどころか笑った。やっぱり変わった人だな、とそう思ったけど、それより好意がだんだん大きくなっっていくのが分かった。
なまえ先輩も、俺のこと好きなのかなってちょっと思うことだってあったし、多分浮かれてたんだよなぁ。嫌になる。
橘さんが好きだったなんてさ。俺ってとんだピエロってわけだね。橘さんのメアド聞いたり、デートに誘ったり、なんなんだよ。俺と仲良くしてたのも、橘さんに近付くためだったとか? うわ、本当最悪。

「深司、今日調子悪くね?大丈夫かよ?」
「別に何もない。大体人の心配する前に自分心配したらどうなわけ?ネットする回数今日多過ぎなんだよな、それを俺が調子悪いとか言ってごまかしちゃってさ」
「あー、はいはい!俺の気のせいなら良いから!」
「なんだよ、人がせっかく喋ってるのに。だから神尾はモテないんだよ全く」
「深司」
「……橘さん」
「ちょっといいか?」

本当橘さんて実は空気読めないんじゃない?今日だってあのタイミングで普通声掛けるないだろ……。そもそも、誘われてるくせに俺で話を逸らすとかなまえ先輩に対して悪いとかないわけかな。なまえ先輩も言われた通りに合わせて、用事もない俺に気まずそうに話し掛けるしさ。俺ってどんだけ惨めなわけ?

「深司。俺が口を出す事じゃないのは分かってるが」
「……なんなんすか」
「みょうじのことで……何かお前は勘違いしてるんじゃないのか?そうでないならば、何故あんな態度を取るんだ?」
「勘違いなんてしてませんし、何故って……橘さんこそ空気読んでくださいよね」
「どうゆう意味だ?」

ここまで言ってもわかんないとか、鈍感なわけ?わかんないわけ?もう嫌になっちゃうよな、そもそもここでこんな話してる時点で分かってないよなぁ。

「深司、俺はお前がみょうじの事を好き……いや、少なくとも好意を抱いてると思っていたのだが違ったか?」
「は…?」

なに言いだすわけ?何でそんな話になるわけ?

「少なくと、みょうじはお前の事が好きだと、俺には見えたが?」
「橘さん何言って、」
「俺にお前のアドレス聞いたときは、必死でちょっと面白かった」
「……っ」
「お前となら一緒に帰るだけでも良いそうだ」
「……」
「深司?」
「……本当嫌になるよなぁ」

2人して俺をからかってるんじゃないの?じゃなかったら、俺って相当な馬鹿だね。てゆうか馬鹿だ。カッコ悪すぎ。こんなこと勘違いするなんて、なまえ先輩のこと相当ってことなのか。

「橘さん、」
「今日だけだぞ」

本当嫌になるよなぁ
俺って馬鹿すぎ。

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