ぶっちゃけ、私はあの美少年に恋をしてしまったみたいだ。生まれて初めて一目惚れなんていうものをしちゃったと思う。なんだか昨日食べたプリンはいつもより美味しく感じたし、特に学校が楽しみだなんてこと今までなかったのに今日は楽しみだな〜なんて思っちゃうし、今だって昼休みのチャイムが鳴った途端に教室を飛び出してきちゃったし。でもそれを友達に話したら、まず名前を聞いてきなさいって呆れられてしまった。確かに冷静に考えてみるとあの美少年のことは顔と学年しかまだ知らないし、分からない。こんなことならプリン3日分と言わずに1週間……いや1ヶ月分くらい言えばよかったかも。大体3日分てことは今日と明日しかないじゃんか……ああ、もうどうしよう!

「何1人で百面相してんの?気持ち悪いけど」
「え?あ、美少……じゃなくてえと、名前、」
「? 何言ってんのあんた頭悪いの?まぁ、ぼーっと外眺めて歩いてぶつかってくるくらいだし当たり前か。むしろとやかく言う俺が馬鹿だって言いたいのかな……それはそれで、」
「あの、名前!君の名前!知らないから、あの」
「ああ、そういうこと。……伊武」
「伊武くん…?」
「うん」

伊武くん!伊武くんて言うんだ!名前まで格好良い!昨日あんまり意識出来なかったけど2年にしては身長あるし、髪もさらさらだし、うわ〜……もうまさに王子様みたいな美少年だよ。

「……何じろじろ見てんの気味悪い。早くしてくれないと休み時間終わっちゃうでしょ」
「あ、ごごめん!プリンだよね!」

気味悪いとか言われちゃった……ガーン、て思って購買でプリンを買いにカウンターに近づくと、ぐいっと腕を引っ張られた。

「え?」
「チョコ」
「へ…?」
「チョコプリンが良い」
「ああ、なるほど!オッケー」

何かと思えば伊武くんはチョコプリンが御所望らしい。チョコが良いだなんて可愛い……!整った顔でチョコが良いとか!ギャップ!そんなのいくらでも買っちゃいそうだよ、買っちゃうよ。

「はい!チョコプリン」
「どーも」
「チョコ好きなんだ?」
「普通。てゆうかニヤけてるんだけど。チョコプリンとか似合わないとか思ってるんだろ、大きなお世話だよ」
「え?そんなことないよ!可愛い!」
「……それフォローになってると思ってんの」
「ごご、ごめん!」
「別にいいけど」
「で、でも!本当に可愛いって思ったんだよ!」
「だからそれ、嬉しくない」

美少年……改め伊武くんが眉を少しひそめる。私のせい?私のせいだよね?え、どうしよ!

「え、じゃあ格好良い!伊武くんは格好良い!」
「……はぁ」

慌てて格好良いを連呼する私を見て伊武くんは呆れたようにため息をついた。そして1歩私に近づいて、立てた人差し指を私の唇まで持ってくる。

「え?え?!」
「……黙って、うるさい」

あ……静かにしろって意味か。てっきり私ったら、うわ恥ずかしい!

「じゃあ、俺行くから」
「え、もう……あ、明日ね!」
「明日土曜だけど」
「……また月曜!」
「じゃあ、なまえ先輩ごちそうさま」
「……へ?」

バイバイと翻した背中は颯爽と去っていくのに、伊武くんの最後の一言だけがエコーする。

名前聞いたけど言ってない、よ?

「な、なんで名前……」
とりあえず今分かることは、私の心臓は壊れそうなほどのドキドキで痛いくらいってこと。

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