「あ〜、もう最悪……」
今日は土曜日で本当ならばお休みなはずなのに、私は制服を着て学校にいる。なんで学校にいるかと言えば、自業自得なんだけど昨日までの課題を出し忘れたから。それもよりによって怖い先生の。……という訳で、今日持ってこいと言われたから従順に制服着て言われた通りに午前中に提出しにきたという訳である。せっかくの休日の午前中が台なしだ。今日は長めに寝ようと決めていたのに……帰ってお昼寝しようかな。
とぼとぼと、校舎を出て校門に向かって歩くと部活をしている所があるみたいでグランドやテニスコートがなんだか賑わっている。普段は意識したことないけど、運動部は休みの日まで精を出して頑張ってるなんて、すごいなぁと思う反面大変だなぁとも思っちゃう。ふと、視界に入れたテニスコートの中から気になる姿が見えた。顔なんか遠くて見えないけど、まさかあの髪は……!ドキドキしながら踵を返して、テニスコートの方へ向かう。近づけば期待は確信になって。やっぱりあの綺麗な長い髪は伊武くんだ。フェンス越しに見える伊武くんは他の部員より遥かに格好良くて見惚れてしまいそう。ちょうど、練習試合か何かをしていたのか伊武くんがボールを打っていた。雰囲気からして真剣っていう感じで……ああもう、格好良すぎる。
伊武くん……、なんて聞こえるはずないけど、名前を呟いてみるとタイミングよく伊武くんがこっちを見て目線が合った。
「え!?」
「……ねぇ、なにやってんのあんた」
「いや、偶然通りかかって……あはは」
「ふーん……偶然ね。土曜にわざわざ?」
そう言いながらもフェンス越しに私の近くまで来て声をかけてくれるんだから、伊武くんは優しいと思う。うっすら額に汗が浮かんでいて、普段の少し無機質な伊武くんとは違って少しセクシーな気がする。
「てゆうか土曜に部活もないのに制服着て学校来るほど暇人だったのなまえ先輩」
「え、いやあのね、提出物を出しに来たんだよ」
「ふーん、……で?」
「で、って?」
「で、何でここにいるの?提出物出しに学校来た人がこんな所覗いてんのか聞いてるんだけど。誰を見に来たのか気になるとか思ってもらったらお門違いも良いとこだから」
「伊武くんが見えたからなんとなく見に来ちゃった」
「……ふーん、あんたも物好きだね」
「そう、かな?」
だって、伊武くんが好きなんだもんなんて言える訳もないしテニス部に知り合いなんて……いた。おおう、なんてこと。クラスメイトの橘くんがコートの奥の方にいる。橘くんがテニス部なのはなんとなーく知っていたような気がするけど、曖昧な記憶過ぎて忘れてた。週明け伊武くんについて聞いてみよう。よし。
「で、今日の用事は学校来るだけなの?」
「え?うん、今から帰るだけだよ」
「ふーん……じゃあちょっとそこで少し待ってて」
「え…?!ななななんて今!?」
「……だから待っててって言ったんだけど。人の話聞いてないのかなぁこの人、それとも俺の話なんか聞かなくても良いとか思ってるわけ?失礼だよなぁ」
「待ってる!待ってるから!」
2時間でも3時間でも!
「そんなに掛からないって言ってるのに嫌味?」
「え…そういう意味じゃなくて…!」
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