「なまえ機嫌良いけど、何かあったの?」
「ふふ!わかる?」

週明けうきうき気分で登校した私を見て、友達が興味津々に聞いてきた。まぁ、聞かれなくても自分から言ったけどね。これが黙ってられるかって話!

「それが……土曜日!伊武くんとデートしたの放課後デート!」
「え、本当に!?すごいじゃん!……でも、土曜に放課後デートとか意味わかんないんだけど、妄想じゃないよね?」
「あ!そか……じゃあ制服デートした!」

確かに制服だったから放課後デート!とか思ったけど、土曜日学校なかったんだった。制服デートか!うん、そんな響きも素敵!

「どっちでも良いけどさ、プリンの約束今日までだけど大丈夫なの?」
「あ……そうだった」

そうだそうだ…、プリンって3日分しか約束してないから今日渡したら終わりなんだ……!昼休みの購買前での待ち合わせはなくなるんだぁ。

「いやでも!部活見に行けば!」
「テニス部の練習見てる子なんて全然いないのに見に行けるの?」
「……ちょっと、恥ずかしいか、な」

そういえばうちの男子テニス部って一波乱あったらしいし、人気がある人がいるわけでもないから観戦してる子なんて見たことないかも。あんなに伊武くん格好良いのに、何故!……と言いたいところだけど、ライバルは少ない方が良いから、それはいっか。

「せめてさ、メアドでも聞いとけば?」
「メアド……、教えてくれるかな」
「さぁ?それはわかんないけど、何か連絡手段あった方が良いじゃん」
「確かに」

あー!こんなことなら、最初のときに聞いとけば良かった!待ち合わせのためとか、なんとか言い訳つけてさ。今更今日言うなんて不自然すぎて……言いにくい。

「むむむむ……」
「なまえ?移動教室なんだから早くしなさいよ」
「……あ、ごめんごめん。次、理科室だったね」

メアドを自然に上手く聞く方法を考えてみるけど、中々良いのが思い浮かばない。伊武くんて勘が鋭そうだし、下手に聞くと好きなのバレちゃいそう。

「ちょっと考えすぎなんじゃないの?」

廊下を歩きながらも、まだ唸っている私に友達は半分呆れ顔で、顔を覗きこまれた。

「あーー!!」
「え!?ななに?びっくりさせないでよ!」

視界に入った瞬間私は叫んでいた。あの人は…!

「橘くん……!折り入ってお話が!」

ああ、神様なんてナイスタイミング。目の前に現れた私の救世主、いや恋のキューピッドさま!彼しかいない!彼に協力してもらうしかない!橘くんに私が伊武くんを好きというのがバレるのだけはしょうがない。背に腹は代えられないとはよく言ったもの。

「今は余り時間がないから手短くいうね、今日の放課後終わったらすぐ橘くんの教室行くから部活行かないで待っててお願い!すぐ!行くから!」
「……よく分からないが、分かった。部活があるから手短に頼む」
「うん!じゃあ授業あるからまたね!」

あまりの私の勢いにびっくりして頷いた気がするけど、うんと言ってくれたんだからこっちのものよ!強引な女だとか思われたかもしれないけど、その誤解は後で解くとしよう。

放課後終わったらすぐ行くから!
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