強いて言うならば、一氏くんのことは嫌いじゃないし、好きというと語弊があるかもしれないけど、顔はタイプな方だし、かっこいいとは思ってた。うん。
でも逆に言えばそれだけで。ほとんど話したこともなければ、仲が良いとかそう言ったことは今までなかった。

『ねぇ…石田くんは口硬そうだから、言うけど誰にも内緒にしといてね?』
「大丈夫や、誰にも言わへん」
『ありがとう。で、どう思う? ぶっちゃけて貰っていいんやけど…私騙されてないけ?』
「それは…あらへん。と、思うが」
『本当に?絶対?』
「一氏は、そんな奴ではない。むしろ、わしが驚いとる」

うん、私だって驚いてるよ。一氏くんって小春くんのこと好きやって思ってたんに、私なんか。そう言えば、石田くんは自分で自分のことそんな風に言ったらダメだって言ったけど、それでも私は、仲も良くない人に好かれるほど人当たりが良くもなければ、容姿も良いわけでもないし。私のどこを好きになったんだろう?

「本人に聞くのが、一番。……と言いたいところやが、聞けん、というなら小春はんに聞いてみたらどうだろうか?」
『小春くん?』

小春くんか。小春くんも、仲が良いってほどではないけど、去年、ほんの少しの期間だけどクラスメイトだったから面識はある。しかも、人当たりの良い人だから、転校生の私にも優しくて、たまに声をかけてくれとった気がする。
……よし、小春くんや!小春くん!…って。でも一氏くんと小春くんって同じクラスじゃなかったっけ…。どうやって呼び出せばいいん…?

「せやったら、わしが一氏を呼び出したるから、その間に小春はんを呼ぶってのはどうや」
『え、いいの?!』
「がんばりや」


昼休み。
先に石田くんが8組に行って5分経った。そろそろ良いんかな…? 私が一氏くんの居るところで、小春くんなんて呼んだら怪しまれるやろうし、って石田くんに言われて待ったんだけど…。もう大丈夫だよね?
8組の前のドアから教室の中をさりげなく覗くと、小春くんの頭が見えた。よし、一氏くんはいない。
そのまま、後ろのドアまで歩いて、近くにいた女の子に声をかけたら、快く呼んでくれた。いつもあんなに一緒にいるし、一氏くんのいないところで2人で話せるとか無理かと思ったけど、こんなに上手くいくなんて。上手くいきすぎて怖いくらいかも。

「は〜い、なまえちゃんお久しぶりね」
『こ、小春くん』
「もしかしたら、来るかと思っててんよ。予想通りやわ〜」

うふふ、って女の子よりも女の子らしく小春くんは笑った。しかも私が来るかもって想像が付いてたとか、やっぱり小春くんはすごいや。私がぼんやりそう思ってると、今のうちに、場所移動しときまひょか、って手を引かれた。
小春くんの手は、ちゃんと男の子の手で一瞬ドキッとしたけど、小春くんがにっこり笑えば、それは気にならなくなった。

「ユウくんのことよね?」
『うん……』
「何が聞きたいの?」
『あの……私…。一氏くんに告白されたんだけどね』
「せやね、ユウくんから聞いたで」
『それでさ、私、一氏くんと全然接点ないし、好きになって貰えるような覚えが全くなくて』
「せやねぇ……なまえちゃんとユウくん、話してるとこ私も見たことないもんなぁ」
『だよね…? 私、騙されてるんじゃないのかな?! 罰ゲームとか!からかわれてるだけとか!?』
「なまえちゃん……、そないなこと言わんといて。ユウくんはなまえちゃんのことちゃんと本気やで。なんで、とか理由は私じゃなくて、ユウくん本人に聞いたらええ。これ以上私から聞くんは、ルール違反やから言わんね?」
『小春くん……』

そこで丁度見計らったかのように、予鈴が鳴った。小春くんはまた私の手を取って、さ、戻りましょか、って笑ってくれた。うん、やっぱり小春くんは優しい。

「ユウくんな、今日は朝から浮かれてねん。この意味分かるやろ? 放課後、テニスコート遊びに来てな」
『うん…』

そうや。一氏くんやって、ちゃんと1対1で向かってきてくれたんやから、私もちゃんと一氏くんに言わんなん。 私は、まだ一氏くんの事、全然知らないから付き合えません、て。


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