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1秒、たった1秒、このインターホンを一瞬押すだけで良いのに、それが出来ずにもう10分位は白石家の前で唸っているだろうか。押しさえすれば後はなんとかなるって分かってるのに、そのワンプッシュがものすごく、すご〜く勇気がいる。ああ、でも早くしないと不審者だと思われちゃうかもしれない……!

「なまえ?何してんのや?」
「え?あ、あ!しら、……じゃなくて蔵ノ介くん!」

ガチャ、と扉が開く音と一緒に蔵ノ介くんが出てきた。え……まさか、これって見られてたってことでは? うわぁ……恥ずかしすぎて今すぐここから去りたい気分だよ。穴があったら入りたい。









「なんかあったん?」
『あ、えと……明日ね、』
「明日?」
『学校までの道分からなくって、教えてほしいなぁって』
「あぁ、なんや。もちろんええよ、じゃあ朝迎えに行ったるわ」
『本当に?!やった、ありがとう!助かる〜!』

おいで、と手招きされて玄関先まで行くと、中からちらりと人が覗いてるのが見えた。あ、あ!あれまさか白石家のママさん?!もう1人の可愛らしい子はゆかりちゃんだ!やばい!見られてる!

『あ、あのはじめまして!!私、今日から隣に引っ越してきましたみょうじなまえです!あの良かったらこれ……』
「あらやだ、見付かってもうた?だからやめとき言うたんに友香里が…」
「なんやねん、ママが先に言うたんや〜ん」
「はいはい、見苦しいからそこまでにしといてや」

蔵くんが一喝すれば、笑いながら2人は中入っていって、ちょっとだけ緊張がほぐれた。良かった……ゆかりちゃんはともかく、ママさん初めて見たから緊張したけど気さくな感じで良かった。

「堪忍な、おかん典型的大阪のおばちゃんやから」
『そうかな?大阪のおばちゃんのイメージと全然違う感じだったけど……』
「そう言ってもらえると助かるわ」
『あ、これじゃあ渡しといて?』

さっさと中に行ってしまって、渡す余裕のなかった菓子折りを渡す。気ぃ遣わんでええよ、と蔵くんは言ったけど、もう買っちゃってあるものだからって無理矢理押し付けるかのように渡した。

『じゃあ……また明日』
「おん、明日はちょうど朝練ないから40分くらいに迎えに行くわ」
『分かった、ありがと!』
「また明日、おやすみ」
『おやすみ!』

隣なんだから見送らなくて良いのに、律儀な蔵は家の前まで出て、私が中に入るまで手を振ってくれた。
ああ、もう!完璧すぎてやばい。カッコイイよ、蔵ノ介さん!

自分の家に戻って、ドアを閉めたらへなへなと足の力が抜けて、その場でしゃがみ込んでしまった。
これは……、現実にいたら駄目なレベルでしょ。顔よしスタイルよしスポーツ万能、そして性格までよしって…。

よし!
ちょっとだけ紅くなった気がする頬を、自分で叩いて立ち上がる。
しっかりしなきゃ、こんなんじゃ明日から持たないよね。学校にはさらに他の部員もいるわけだし。
蔵が好きとは言え、テニオタな訳だからちょっと楽しみだったり…。

ああ、もうよくわかんないけど楽しみ!
とりあえず今日1日で大分疲れたし明日は転校初日だし、さっさと寝なきゃな〜。

でもでも今日は眠れない!

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