結局イルミは見付けれないまま、さっき4次試験が終わりを告げた。

「ナマエじゃん、1人?」
「キルア!」

出発地点に戻ろうと走っていたら、後ろからキルアが声をかけてきた。

「あれ?キルアこそ1人?」
「うん」
「えー、キルアも1人だったんなら探せば良かったなぁ。暇すぎて死ぬかと思ったー!』

てっきりキルアはゴン君達の所にいるのかと思ってたのに違ったんだ。2度だけ見掛けたゴン君は1回目は1人だったけど、2回目は皆といたしキルアもいるもんだと思ってた。

「はー?やだよ。ナマエがいても足手まといじゃん」
「ひどい!可愛くない!」
「お、見えてきたぜ!じゃあ俺先行くな!」
「本当だ!久しぶりに普通の生活出来る〜!」

そう言ってる間にキルアはもうスピードを上げて先に行ってしまった。待っててくれても良いのに、兄貴に似て薄情者め!

「で、普通って1週間どんな生活してたの」

いきなり聞こえた声に振り向くとイルミがいつの間にか横にいた。心なしか、肌がつやつやしている気がする。
思わず抱き着こうとしたら、それよりも先に腰を掴まれて抱き寄せられた。

「イルミ!ちゃんと寝たの?肌つやつやしてるよ。いつもちゃんと寝れば良いのに」

すっぽり腕の中に収められて見上げると、元々整った顔の肌が普段より綺麗になってるもんだから、そっと指で触ってみる。

「俺の話聞いてる?何で俺を捜さなかったのさ」
「捜したけど見付からなかったんだもん」
「携帯、行く前に渡したでしょ?」
「あー……アレねぇ、実は家に忘れてきちゃったんだよね」

今の今まで隠してたことがバレてしまった。でもね…必要ないからって持たされていなかった携帯をハンター試験を受けることになって、危ないからという理由で渡されたまでは良いんだよ。でもさ、それがキッズケータイだった時のやるせなさ!浮かれてケータイ見てみたらボタンは5個。短縮3つと受話器マーク(切る、出る)だけ。
だから最初に登録された3ヶ所にしか掛けれないっていう。(ちなみにイルミ、ゾル家直通、キキョウさん)

……とまぁ、過保護なイルミがくれた携帯なんだからと諦めて部屋に置きっぱにしてたら、そのまま忘れてきちゃったっていう感じなんですよね。
今までイルミがなんやかんやで近くにいたし、必要な機会なんてなかったからバレなかったんだけど、とうとう……バレた!

「で?言いたいことはそれだけ?」
「えへ……すいません」
「帰ったら没収」
「えー。まぁ、どうせイルミと家にしか掛けれないから良いけどさ」

私はお友達と番号交換したりしたかったのに。あの携帯じゃ無理だからもういいけどさ。

「本当ナマエって世話が焼ける」
「イルミが過保護なだけでしょ!」
「ナマエが危なっかしいからでしょ」
「はいはい、そうですね」
「……終わるまで何の連絡もないから、何かあったのかと思った」
「失礼な!そこまでやわじゃないのくらい知ってるでしょ」

そう簡単に死んだり殺されたりなんてことは無いよ!本当にイルミったらどんだけ私のこと弱いと思ってるのかな。

「何もなくて良かった。ナマエに何かあったら殺したかもしれない奴全員殺さなきゃいけないし」
「……はは」
「だから良かった」

そう言って頭もすっぽり包むように抱きしめられて、それから額、頬、鼻、そして唇とキスを落とされた。

*

「ナマエちゃん!」
「ゴン君!」

ネテロ会長との面談で呼ばれた帰り、廊下を歩いていると今かららしきゴン君とすれ違い様に声をかけられた。

「ナマエちゃんは終わったの?」
「そうだよ、ゴン君は今から?」
「うん!」
「そっか。頑張ってね」
「うん、またね!」

ゴン君と別れて、部屋に戻ろうと身体の向きを変えるとすぐ目の前に立っていたイルミにぶつかった。

「え?いつの間にいたの?」
「ゴン……キルアが入れ込んでるやつだね」
「入れ込む?ゴンはキルアの友達でしょ」
「……キルアに友達なんていらないよ」

またそんな事言って、……自分はヒソカさんがいるくせに。

「言っておくけど、ヒソカは友達じゃないからね」
「え」
「顔に出てた」
「あは」
「……ナマエさ、」
「ん?なに?」
「眠いんでしょ?」
「……うーん、言われてみればちょっと眠いかも」
「顔が疲れてる」

さらさらと髪を梳かされて頭を撫でられると眠気が襲ってきた。こういう時のイルミの寝かしつけはピカイチ。いつもイルミにそう言われて触られると、顎を撫でられた猫のように急に眠くなる。

「試験まで余裕あるみたいだから寝なよ」
「う、ん…そうしようかな」

身体がふわっとしたと思ったら、イルミに抱き上げられていた。

「こんな所で寝ないでよ」
「大丈夫だよ、自分で歩ける、」

そうは言いつつ段々と睡魔は着実に襲っていて、どうせこれ以上なにか言ってもイルミは下ろしてくれそうにないだろうし、大人しく逆らわずに抱かれた。


俺がいないと何もできないんだから
ま、俺がそういう風にしたんだけど。

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