「ナマエ」
「……ん」
「まだ拗ねてるの?」
「拗ねてなんかいない!……怒ってるんだよ」

落ち着けと言いたいのか、イルミはポンポンと私の頭を撫でる。イルミの手は冷たいけれど、私にはいつも温もりをくれるから好き。

「イルミ……」
「大丈夫」

抑揚もなく単調だけど、何故か安心するその言葉に顔だけ振り向くと、ギュッと抱きしめられた。

「ナマエの性格わかってて、だから皆キルアに会わせないんだよ」
「……うん、分かってる」
「どうせもうすぐ独房から出てくるよ」
「うん」
「泣かなくても良いでしょ。俺が泣かせたみたいじゃん」

そう言いながらも、目に溢れてくる涙をイルミが拭ってくれる。普段は無神経だったり、突拍子もないことを言うのにこういう時のイルミは優しくて、酷く甘い。
何も言わなくても全てが伝わる感じがして、イルミが作りだす甘い何かに浸されて、私はもうこの人から一生離れるなんて出来ないんだろうな、って漠然と思わされる。

真実かは置いておいても、もしかしたら私もイルミに刺されて操られているのかもしれない。それでも良いと思うのは操られているからなのか、私自身の気持ちなのかも、もう分からなくて。でも、そんなことすらどうでも良いと、いつも考えるのを止めてしまう。

「イルミ」
「何?」
「……好き」
「知ってる、目閉じて」

本当にイルミは狡い。目尻に残る涙をまた拭われて、言われた通りに目を瞑る。
数秒後、カチッという音と首に少しの違和感。思わず目を開けるとイルミが僅かに笑っていた。

「キスされると思ったでしょ」
「なっ…!」

図星を突かれて顔に熱が集中する。恥ずかしさと驚きで何も言えないでいると、座高の関係で見下ろすイルミが私の首を指差す。さっきの違和感の原因はこれ。
自分の手で首に触れば、さっきまで何もなかったはずの首に細身のチョーカーが付いている。

「イルミこれ、」
「首輪」
「……は?」
「ていうのは半分冗談。ハンター試験受かったご褒美」
「良いの?」
「うん」
「……ありがとう」

お礼を言うとイルミの顔が近付いてきて、今度こそキスをされた。

「GPS機能付いてるけどね」
「は?」

可愛い子には旅をさせろ…か、
さっきゴトーからゴン達がうちの敷地入ったって連絡あったんだよね。


ALICE+