イルミは私を抱き上げたまま、部屋に入ると後ろ手で鍵を閉めた。そのままそっと、100階クラスとは違う大きなベッドに落とされた。

「で、ヒソカには何もされてないよね?」
「え?!な、なんで…?」

ヒソカさんと会ったなんて言ってないのに何で…!?もしかして、私と会う前にイルミもヒソカさんに会ったとか?それなら白を切っても無駄な事だし、自分の首を絞めかねないし……、

「ナマエ?何もされてないかって聞いてるんだけど?」
「……会って話しただけだよ!エレベーター降りたとこにいたの!」
「ふーん、そう」
「イルミもヒソカさんに会ったの?」
「いや、会ってないけど」

え?会ってないの?じゃあ何で知ってるわけ?
私が不思議そうな顔をしていたのか、イルミも不思議そうな顔して首を傾げた。

「……ナマエ自分の右腕、凝で見た?」
「え?……ううん、なんで?」
「見て」
「うん?…あー!」

言われた通り右腕を凝で見てみると、変な物が付いてる。なにこれ、ひらひらした紙?じゃないけど、念よね、これ……"ナマエ強くなったね、美味しそう◆"って……。なんてこったい、いつの間に付けられたのか全然分からないんだけど。

「あは……ヒソカさんたら、ね」
「で…?」
「で……って?」

イルミはすごい威圧感でじりじりと私に寄ってくる。ベッドに座らされたままの私は、必然的に後ろに下がるけれど、すぐにベッドサイドぎりぎりになってしまった。これ以上行くと落ちちゃう。

「で、ヒソカに何されたの?」
「されてない、されてないって!ただ話しただけなんだって!念だって知らないうちに付けられたの!」
「ふーん」

そう言ってもあまり信じてくれていないのか、イルミが身体を引く事はなく、顔はすごく近いままの距離を保ったまま。動けば唇が触れちゃいそうで、私はヒソカさんの話なんかよりイルミのこの体勢の方が気になってしょうがない。

「イ、イルミ近い」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど……、」

ずっとこの体勢でいるのは恥ずかしいんだよ!これなら強引にキスされる方がまだ良いというか、……いつもならそうするくせに、なんでこんな羞恥プレイ、あー、もう!

「200階は許可したけど、ヒソカにこんなの付けられて気付かないなんて、まだまだだね」
「ごめん…」
「今日から試合するまでの間、凝を怠らない事。あと人の試合の見る時も凝」
「うん、分かった…」

確かにちょっと200階の許可出て浮かれてましたけどさ。

「……なに、物欲しそうに見て」
「見てない!……恥ずかしいからどいて欲しいの!」
「ほんとに?」
「ん…、」

イルミが強く唇を合わせてきた。いつもと違ういきなりのキスにびっくりして、少し肩が上がる。それに反応するかのように素早く頭の後ろに手が回されて、離れることは許されないまま、更にキスは深くなる。

「んー!」
「……ちょっと、黙って」
「ん」

さらに強く頭を抑えられて、どうしようもなくて力を少し抜くと、そのタイミングでイルミも私の頭を押さえる手の力を緩めた。

「ナマエからヒソカの念の匂いがするなんて、苛立つ」
「ちょっと、イルミ……」

やっと唇を解放してくれたイルミは、ぎゅっと私を自分の腕の中に閉じ込めるかのように抱きしめる。……ちょっと苦しいくらいだけど、少しだけ我慢。
今更気付いたけど、ヒソカさんと会った後のイルミはちょっと強引で、だけどたくさん私に触れてくれてる気がする。
それって、やっぱり嫉妬してくれてるからなのかな。いつもの独占欲じゃなくて、嫉妬なのだとしたら……ちょっと嬉しいなぁ。

もっともっと…、ちょうだい


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