目が覚めると、そこは自分の部屋だった。
あれ?私なんで自分の部屋に……?イルミと一緒に闘技場にいたはずなのに、見慣れた景色に逆に違和感を感じる。……あぁ、そっか。私は試合をしてして、それから倒れたんだ。そこから記憶が飛んじゃってる。
シーツの中から腕を出して見ると、綺麗に包帯が巻かれている。……夢では、ないね。あー、やっちゃった。どれくらい眠っちゃったんだろう。実践で念使ったの初めてだったから、一気に来ちゃったか。ベッドから降りてカーテンを開けると、外は明るいけど太陽は既に傾いていて、少しオレンジ色を帯びてる。
「起きたんだ?」
「イルミ……、私どのくらい寝てた?」
「1週間くらい?3日過ぎても起きないから移した」
「そっか、1週間。もうちょっと訓練しないとダメだなぁ」
帰ってきたついでに、念も完成したことはしたし家で訓練手伝ってもらおうかな。こんな毎回倒れてたら意味ないし、使えないし。
「ね、ナマエ」
「ん、なに?」
イルミがベッドに腰を掛けて、その横に座る様に促すから、隣に座った。
「欲しいもの決まってる?」
「……ご褒美?」
「うん」
そっか、一応勝ったんだもんね。んー……そんな真剣に考えてなかったから、改めて言われるとすぐには出てこない。この前チョーカー貰ったから……
「ピアスとか?」
「……本当にピアスが良い?」
「ううん、イルミがくれるなら何でも良い」
「そう、じゃあこれあげる」
イルミはおもむろに小さなリボンの掛かった箱を私の手に握らせた。イルミがこんな可愛らしく包装された物をくれるだなんて、珍しい。
それに何が欲しいって聞いてきたくせに、最初から買ってあったなんて、初めから聞いてないのと一緒。多分何を言ってもコレだったんだろうな、って思うとそれはそれでイルミらしくて、ちょっと愛おしく見える。
指輪だったりして……、なんて一握の淡い希望を抱いてしまったけど、そんな気持ちなんて、イルミは知るよしもないよな、って思いながら包装紙を破る。でも指輪はいつかくれるよね。
「………え?」
なにこれ、……。
やだ、なんでこんな、……こんなサプライズ、イルミらしくないよ。そんな恥ずかしいことしないでよ。……箱の中には1枚のメッセージカードだけ。
"結婚してあげる"
「……っ、ばか…」
「俺からのご褒美。念完成したからね」
「イル、ミ…」
「指輪もあるよ。欲しい?」
「イルミ…!」
「はい」
すっと左手をとられて、薬指に華奢なシルバーの指輪が付けられた。悔しいけど可愛い…!
婚約指輪はでっかいダイヤモンド買ってもらおうと思ってたのに、これじゃあ文句も言えないじゃん。
「なんで泣きそうな顔するわけ?不満?」
「不満…!」
「どこが?」
「文句のつけどころがないから!」
「それが何でダメなわけ?」
「痛い…!」
ごちん、とデコピンをお見舞いされたけど、音と痛みからして全然デコピンどころじゃない。う……涙出てきた。ばかばか、涙なんて1回出したら、止まらなくなるじゃんか!
「嬉しくないの?」
イルミの大きな目が少し真剣みを帯びて私を見つめる。この真っ黒な瞳で問われれば、私は嘘を付くことさえ出来ないのに。それをわかって聞いてるのか、無意識なのか、どっちにせよ、私には抵抗の余儀はない。
「嬉しくないわけないじゃん……」
「なら良かった」
そう言ってイルミは珍しく、少しだけ口角を上げて目を細めた。
そっとイルミの肩に頭を預けると、私の髪を一撫でてして、頭ごと優しく抱いてくれる。好き、……大好き。
愛してるは、まだ少し恥ずかしくて、まだ早いような気がして、照れ隠しに大好きを使うけど、それでもまだ恥ずかしくて心臓がちょっと痛い。
「言っとくけど、ちゃんと結婚したら俺には絶対服従だから」
「え?今だって服従されてるじゃん」
そもそも私イルミに逆らえないじゃんか。何言ってるんだろうか……、人がプロポーズにちょっと浸ってるっていうのに!
……でも、どうせならそうやってきつくきつく縛って。……なんて、そう思ってる事は言わないんだから。結婚で、イルミが私を縛るように見せ掛けて、私がイルミを縛るのかもしれない。
好きを何回かければ愛してるに変わるかな?
何回唱えても足りないよ、
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