「良い汗かいたー!シャワー浴びたい!」

こっちに戻ってきて早1週間。毎日家族の誰かに稽古を兼ねて、訓練してもらってる。久しぶりのシルバさんの稽古はハードだけど、終わった後のシャワーは格別!

「はー!気持ち良かったー!」
「ナマエちゃん、ナマエちゃん」
「はい、キキョウさん?」
「あらやだ、いい加減お母さまって呼んでって言ってるでしょう?ああ、でももうお義母さまって呼んでほしいわね〜!ふふ!」
「え…?」
「ドレスもね、特注しなきゃよね〜。ふふ!ってことで、午後から私と仕立て屋に行きましょうね?」
「え?今日ですか?」

相変わらずキキョウさんてば強引すぎる!可愛がって貰ってるのは分かるけど、いつも振り回されちゃうし。今日もまた急だよね、全く。……とか言って、ドレスと聞いてちょっとテンション上がっちゃってるんだけど!
ドレスってウエディングドレスだよね?やっぱり!

「だから、イルミも行こうよ!」
「俺、午後は仕事だから無理」
「えー!」
「そういうのよく分かんないし。母さんに任せとけば大丈夫でしょ」
「でも……!」
「楽しみにとっとく。ナマエのウエディングドレス姿」
「っ!」

ほんの少し口角を上げたイルミが、私の耳元でそう囁けば、たちまち私の頬は熱を持った。ずるい!これは確信犯だ、絶対。
ゆっくりと頷けば予想通り何も無かったような顔をして、イルミは部屋から出ていった。振り向きもせず、3回だけ手を振って。

*

「んー、このデザインも良いけど、レースがちょっとって感じねぇ…」
「ではこちらはいかがでしょうか?」
「あら、良いわね!でも、それだと袖口と胸元が寂しすぎるわ!」
「さようですか、……ではこういう華やかなのはいかがでしょうか?」
「あらー!可愛いわ!良いわ!良いじゃない!」
「こちらは新作で入ったばっかりなんですよ」
「それならベースはこれで、レースはそれで、袖口のデザインはそっち、胸元はこっちのドレスみたいなのが良いわ!値段は気にしなくて良いからそのように早急に作ってちょうだい!」
「はい、かしこまりました」
「良かったわねナマエちゃん、出来上がるのが楽しみね!」
「そうですね……、決まって良かったです。……本当に」

何回着せ替え人形のように着替えたのか分からないけど、どうにかキキョウさんの思う通りのものが決まったらしい。どれもこれも可愛くて、私にはどれも選べないくらい可愛いと思うのに、キキョウさんはあれこれと注文をつけるから、その度に私は試着をしての繰り返し。
訓練よりも疲れたかもしれない……。女の子の憧れとはいえ、こうまでするとちょっと満足を越して胸やけだよ。
でも……、イルミは喜んでくれるのかなぁ。いやいや、あのイルミのことだし絶対そう簡単に可愛よ、なんて言わないんだろうし、キキョウさんみたいに感嘆なんてしてくれないと思うけど。でも、やっぱり見てほしいのはイルミ1人な訳で、
ってゆうかなんかもうこんなこと考えるのとか照れる……!

「楽しみ、だなぁ…」
「あと、帰ったら新婚旅行のプランも練らなきゃね!」

私、本当のゾルディックになるね
そしたらナマエ=ゾルディックって、胸を張って名乗れるよ






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