「だぁーー!疲れたー!」

あっという間に終わってしまった式に対して、キキョウさんが用意した撮影の方にたくさんの時間を費やした。式なんて、ゾルディック家の皆でちょちょい、と略式だけやっただけで。残りは記念の写真集のための撮影、撮影、撮影。
キキョウさんが楽しそうにしてたのは、こっちの方だったんだな絶対。

「ナマエ、大丈夫?」
「うん、でもちょっと疲れた……」

最後の最後にあの特注のドレスで撮影は終わったけれど、どれだけ撮影に要してたのだろうか。式は午前中に挙げたのに、外は真っ暗だよ。

「イルミ、これ脱ぐの手伝って」
「……まだダメ」
「えー?!これじゃあシャワーも浴びれないし寝れないし苦しいよ!」
「せっかく着たのにもったいない」
「もったいない?!」

イルミもやっぱりキキョウさんの血が通ってるんだわ……。手伝ってくれないと脱げないのに本当にその気がないみたいで、自分だけタキシードを脱いでネクタイを緩めてベッドに座るイルミを睨む。

「ナマエ、もう逃げられないね」
「え?なにが?」

少しはだけたシャツから見える鎖骨が妙に色っぽくて、心臓が跳ねる。イルミの表情はいつも通りなのに、いつもより刺すような鋭い面持ち……な気がする。

「もう俺からは一生逃げられないね、ってこと」
「え?今さら?」
「うん。もう離さないし逃がさないし、出さない」
「出さないって……どこから?」
「俺の籠から」

おいで、と目で言われる。
長いドレスの裾を持って、大人しくベッドサイドのイルミの元まで歩み寄ると、腕を引かれて膝の上に座らせられた。

「イルミ……?」
「ずっと、小鳥みたいに俺の籠に閉じ込めとくから」
「……それでもいいけど」
「ナマエが何も出来なければ、外にも出られないように囲うのにな」
「それ似たような事前にも言ってたね」
「……そう?」
「うん、そう。……でも、そんなことしなくても、ずっとずっと前から私は、イルミのものなのにね」
「……そう」

自分で言ったのに、ものすごく恥ずかしくなってきて頬が火照っていく。じっと、私の目を見つめていたイルミも、短く相槌を打つと私の腰を引き寄せて、肩に顔を埋める。私も腕を伸ばして、イルミの背中に回す。低いイルミの体温が心地好くて、自分から頬を近付け擦り寄った。

「本当なら外にも出したくないくらいだよね」
「それはちょっと……つまらないかも」
「ナマエの目に入る男が俺だけだったら、良いのに」
「じゃあ、皆イルミと同じ顔にすれば?そしたらイルミのこと思い出すよ」
「ダメ、ナマエ馬鹿だから俺と勘違いするかもしれない」

そう言うと、イルミはぎゅっと私を抱く腕の力を強くした。ねぇ、イルミは気付いてるんだろうか。こうやってイルミが甘いときは、いつもより少しだけ表情豊かになっている事を。

「イルミは、私の前でしか笑わないでね」
「……そもそも笑ったことないけど」

私、これからもっと強くなるから。イルミの足手まといにならないように。ゾルディックの名に恥じないように。だから、どうかこれからもずっと、イルミの笑顔だけは私のものってことにしといてよ。

「ナマエは全部俺のだけどね」
「……うん。イルミ、好き」
「はいはい、俺も愛してるよ」

真っ赤になった顔を隠したくて、今度は私がイルミの肩に顔を埋めた。こんなに改めて真面目に言うのは、すごく恥ずかしい。ずっと一緒にいたし、明日からもずっと、その先もずっと一緒にいるのに、そういうのって照れる。
あー、もう、このドキドキに慣れる日は来ないわけ?歳とったら心臓もたないよ!
でも、ずっとイルミにはドキドキさせられるんだろうな。これまでもそうだったように。私が早く死んだらイルミのせいだよ。

私だけに笑う無表情な君
ずっとずっと一緒にいて、


ALICE+