困難なほど人は欲しくなるものだ。


「クロロ」

呼び出されて来た小さなカフェへ入れば、普段より僅かに不機嫌そうな声で名前を呼ばれた。
こいつが俺をクロロと呼ぶのは機嫌が悪い時か俺に物言いする時だ。
黙って目の前のイスに座れば、ひとつ溜め息を吐かれた。

「溜め息を吐きたいのはこっちだ」
「……なんでクロロが溜め息なんかつくのさ」
「俺が欲しかったものに、先に手を出したのはそっちだろう?」

そもそも、ナマエは俺が欲しかった代物だ。調べ物を頼んだだけなのに、秘密にしてコソコソ逢い引きしてたのはどっちだ。

「ナマエは俺のだよ。クロロよりも前に俺が出会ってた。メイデンピンクの事は後から知ったんだ」
「……ほう。それは初耳だ。俺はコソコソと隠しているからごまかそうとしているものだと思っていた」
「……俺はあの眼は関係なくナマエが好きなんだ。クロロみたいにあの眼が欲しい訳じゃない。」

普段冷静なうちのブレーンがこんなに自分の感情のまま話すことは本当に珍しいな。
恋だ、愛だ、そんな感情俺達は持てないものだと思っていたがお前はそうじゃなかったんだな。それとも、ナマエには特別惹かれる何かがあるのだろうか。
……どっちにしろ、俺はまだナマエを手放すのは惜しいな。せっかくすんなり奪えたのに、もったいない。メイデンピンクの眼は欲しいし、ナマエ本人にも興味が出てきた。ナマエは俺も魅了してくれるのだろうか。

「結論だけ言おう。俺はナマエを返す気はまだない。」
「……まだって?」
「ナマエ本人に興味が出た。……気が向いたら返してやってもいい」
「…ふざけないでくれる?」
「……ただな、1つ言わせてもらうが」
「なんだよ?」
「今ナマエは誰にも監視などされていないし、念もかけてない。逃げ出せる状況だ。それでもし、俺が戻った時そこにいれば俺を選んだってことだと思わないか?」
「……」
「もしお前を好いてるなら逃げ出してお前の所に行くんじゃないのか?俺は携帯も財布もカバンは奪っていない」

多分、ナマエは逃げ出してなんかいない。
そこまで頭の悪い人種じゃない。
欲しいものなら、汚い手を使ったって良い。俺は盗賊だ。なぁ、シャルナーク?

それはお前も同じだろう?
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