「帰ったぞ」
「……おかえりなさい」


あれからまたどのくらいの時間が流れたのだろう。時計もないこの殺風景な部屋では時間感覚もなくて、1時間経ったのか3時間だったのか、それとも6時間くらいだったのかそれすら分からない。

「逃げなかったんだな」
「……逃げたら逃げれたのかな」
「無理だな」
「そうですよね…」

クロロさんが着ていた上着を脱ぎながらこちらに近づいてくる。私が乗っているベッドに膝をかけて閉められたままだったカーテンを開けると、真っ暗な夜景が目に入ってきて今は夜なんだと分かって。そのまま半分だけ開けられた窓から冷たい風が入ってきて、篭ったこの部屋の空気をひんやりと少しずつ入れ換えてくれる。

「腹が減っただろう?」
「大丈夫です」
「お前、飯は作れるか?」
「……それなりには」
「俺は腹が減った。何かあるもので作ってくれ」
「拒否権は…?」
「あると思うか?」
「……分かりました」

こうやって喋るクロロさんは全然怖くないけれど、本気を出されたら私なんていとも簡単に殺されちゃうんだろう。生きることに執着してるつもりなんてないけど、いや違うか、そんなこと考えさせられる機会なんてここ何年もなかったから……生きてることが普通だったから、普通の幸せを知っちゃったから死ぬのが怖いんだ。
またシャルと美味しい紅茶飲みながら話したい。
またシャルに会いたいよ。
でも…、

「何か作れそうか?」
「あー……そうですね、チャーハンくらいならすぐにでも」
「卵もあるだろう?オムライスが良い」
「わかりました」

オムライスだなんてちょっと似合わない…なんて思って、ちょっと可笑しくなったけどそういえばシャルもたまに食べてたなぁ。

「出来ましたよ」
「……このソースは?」
「ケチャップ、チキンライス分しかなかったんで、ホワイトソースにしました」
「こんなの初めて食べるな…」
「口に合うか分からないですけど」
「美味い」

クロロさんは見た目とは違い豪快にスプーンにこぼれ落ちそうな量を掬って、口にオムライスをほうり込んで本当に美味しそうに笑った。

「クロロさん、口にソース付いてますよ」

本当にお腹が空いていたのか、次々に口へ運ぶクロロさんは子供みたいでなんだか少し可愛い。

「なんだ、まだ付いてるか?」
「あ……いえ、クロロさんてちょっとシャルに似てるなって」
「シャル?」
「あ!えと、シャルってのは友達なんですけど……なんだか言動とか、たまにクロロさんと彼がダブるんです…」
「そうか。お前はそのシャルという男が好きなのか?」
「す、好き…!?」
「違うのか?」
「……好き、なのかもしれません。クロロさんに会ってから、いえクロロさんに出会う少し前から私はシャルのことばかり考えてます、それって普通は恋って呼ぶんだと思います」

私は恋なんてしたことがないから、どこから恋でどこまでが友達としての好きとか、そういうのが分からない。でも、これを恋と呼ばないならば私は一生恋なんてしないで良いかもしれない。だって、もしこのまま死ぬくらいなら最期にシャルに会いたいと思ってる。その想いが恋でも愛でもないというのなら、これから先ずっと知らなくて良い。

「……シャルに会いたい、」
「…………」

好きと気付いたのに、
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