うわぁ…どきどきする。大丈夫かな、邪魔にならないといいな。
「本当に大丈夫かな……」
「心配しすぎだろ。大丈夫だよこの子なら」
「マチさん…!わわ私頑張ります!」
「うん、頑張りな。最悪サポートしてあげるから。…それにしても…、シャルナークがここまで過保護な心配性だったとはねぇ…」
マチさんが呆れた顔でシャルを見ると、シャルは納得いかないような顔で私を見た。
そんな顔されても、行かなきゃいけないことは変わらないんだよ、シャル。私のやる気と勇気を削がないでよ!
今日は初めて、幻影旅団のお手伝いに参加することになってて、今までの成果を発揮する場でもある。だから、今日と決まった日からシュミレーションしたり、特訓も今日に合わせた内容をこなしてきたんだし、きっと大丈夫!……なんて、思わなかったら不安に押しつぶされそうだよ。
シャルが心配してくれるのは有難いけど、今日は集中しなきゃ……。
「じゃあナマエ、気をつけるんだよ」
「うん、マチさんもいるしウボォーさんも来てくれるって言ってたから大丈夫だよ」
「……俺は団長と違う仕事があるから行けないけど…、何かあったらすぐ連絡すること。いいね?」
「うん、シャルも頑張ってね」
シャルが一緒に行けないのは、ちょっとだけ寂しい。でもシャルもお仕事があるんだからしょうがないし、私も頑張ろうと思う。
旅団の皆さんもいるんだから安心だよ、って言おうとシャルを見上げたら、前髪を撫でられた。
「シャル…?」
「大丈夫だから、ね」
「うん?」
そのままシャルは、おでこに唇を落とした。恥ずかしいはずなのに、それよりも、すごく安心する。シャル、好き。思わず呟きそうだったけど、マチさんがいることを思い出して、咄嗟に飲み込んだ。
「いってらっしゃい、ナマエ。また後でね」
「うん、いってきます!」
それからどれくらい移動したのか、最近の私の感覚は常人じゃなくなってきているから分からないけど、2.30キロくらいは走ったような気がする。この距離を30分程で駆け抜けれるようになるなんて、少し前の私に言っても絶対に信じない自信がある。
シャルに抱えられて連れて来られた時も死ぬかと思ったけど、今思えばシャルは手加減して走ってくれてたんだなぁって分かるようになった。
「ナマエ、着いたよ」
「うわぁ、すごい…」
ターゲットがあるらしい、大きな屋敷の前でマチさんが立ち止まった。まだウボォーギンさんは来てないみたい。
何時に待ち合わせにしてあるのかな?って時間を確認しようとしたら、マチさんが敷地の中へ入っていく。
「え?マチさん?ウボォーギンさん待たなくていいんですか?」
「あぁ、あんたにも言ってなかったね。ウボォーが来るってのはシャルナークへの嘘なんだよ。あんまり心配するもんだから」
「ええええええ?!」
「今日みたいな内容、私らだけで充分。ただ、団長の欲しがってる蔵書の続きを盗るだけなんだよ」
「そ、そうなんですか…」
なんだぁ…こんなに緊張するほどのことじゃ無かったのか。シャルもあんまり心配するから、失敗も出来ないし、足手まといにはならないようにしなきゃ!ってプレッシャーだったのに。
「団長が、初めはこれくらいで良いだろうってさ。まぁ、大層なお宝ではないみたいだけど、団長いわくレアな蔵書で現存するのはここにあるやつだけっぽいし、これだけ大きな屋敷だから一応は気をつけなよ」
「は、はい!」
「凝は怠らないようにね」
「はい!」
目を閉じて深呼吸をする。大丈夫、今の私はこの前までの私とは違う。強くなった。
ゆっくりイメージして、眼を発動させる。そして凝をする。……大丈夫、出来てる。
行くよ、とマチさんの合図で屋敷へ近づく。中に誰かいる、けど、一般人だ。
正面玄関ではなく、その上の窓へ飛び乗るマチさんに続く。
中へ入ると、廊下に灯りがともっているだけで、誰もいない。シャルに事前に頭に入れとくように言われた屋敷内の見取図を脳内で再生する。確かここを左に進んで、二本目の角を右に、それから三つ目の扉が図書室のはずだ。
マチさんの後に続いて、物音を立てないようにそっと廊下を歩く。
なんだろう……人の気配はしないのに、誰かいる気がする。もしかして、絶してる?
いや、でもマチさんが感じないなら気のせいだよね? 私が気付いて、マチさんが気付かないわけがないもん。
「……なんか嫌な予感がする」
「え!? マチさんも?じゃあもしかして…」
やっぱりこのお屋敷何かおかしいのかもしれない…。急に怖くなって、後ろを振り向くと、そこには知らない人が立っていた。
「え?うそ……」
「見ーつけたー」
「ナマエ?!」
その人の口が綺麗な弧を描いて笑う。マチさんの私を呼ぶ声が聞こえたけど、それに返事をする間も無く、私の意識はブラックアウトした。
何が起きたか、わからなかった。
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