久しぶりに嫌な夢を見た。遠い昔の記憶。
皆が私を地下の誰もいないところに閉じ込める夢。


「ナマエ!聞いてる?」
「え?……あ、シャルか」

気付けばシャルが不思議そうに私の顔を覗き込んでいて、マスターもグラスを拭きながらこちらの様子を見ていた。

「ごめん、ぼーっとしちゃった」
「寝不足?」
「何で分かるの?」
「隈出来てる」
「本当に?嫌だなぁ…」

シャルは観察力が鋭くて、何でもすぐに気付いちゃうから時々困っちゃう。夜中にあんな夢を見たものだから、それから眠れなくなってずっと起きていたからか今頃少し眠い。平日だけど半休だったからご飯食べに来たまでは良いけれど、マスターお手製のランチを食べたら陽気もあって眠気を誘う。

「ナマエ今日はそれ飲んだらお帰り?」
「え?」
「マスターの言う通りだよ、今日これから休みなんでしょ?家帰って寝なよ」
「あ、…うん」

マスターとシャルに言われた通り、帰って寝た方が良いかもしれない。
気を抜けば目が閉じてしまいそうなくらい瞼が重いし、閉じてしまいたいとも思う。
…ああ、でも平日に来てシャルに会えることはあまりないのに。
今日はせっかく偶然会えたのにもったいない…そう思ってる自分がいる。

「ほら、ナマエ行くよ?心配だから送ってあげるから」
「へ…?」

シャルが……送ってくれる?な、なんて?

「ほら立って?」
「う、うん…」
「ナマエ、シャルに襲われないようにな」

促されて慌てて席を立つとマスターが含み笑いで冗談を言うもんだから恥ずかしくて顔が少しほてっちゃう。

「シャ、シャル…!」
「何?」
「手…恥ずかしいよ」

店を出た所でシャルにさりげなく手を繋がれた。
あまりに自然すぎて、照れてるこっちがおかしいのかななんて思えてきちゃうから不思議。

「ナマエったら可愛いなぁ」
「か、可愛い!?」
「そんなに照れなくても危なくないようにだよ」
「あ、…そっか」
「……ナマエ」
「うん?」
「ナマエって…カラコンしてる?」
「え!?なななんで?」
「いや最近流行ってるでしょ?」
「あ、うん…」

びっくりした……そんなこと、聞かれるだなんて。誰にもバレないようにカラコンしてるけれど、こんなに唐突に聞かれると動揺してしまう。今日はあんな夢を見たあとだから尚更。

「じゃあナマエは本当は何色の目なの?」
「…うすいグレーだよ。でも黒い方が大きく見えるかな、って!」
「そんなことしなくてもナマエはそのままで良いのに」

シャルはクスクスと笑って私の頭を優しく2、3度撫でた。私より幾分も大きいその手はとても心地好くて、忘れかけていた眠気をまた誘った。

「そんなことないよ!あ…うちここだから…」
「そうなんだ、じゃあゆっくり休んでね?ちゃんと寝なよ」
「じゃあ」
「あ、シャル…!」
「ん?」
「今週末もいる?」
「うん」
「私も行くから」
「うん、じゃあまた週末に」
「ばいばい」
「じゃあね、ナマエ」

不確かな確信
ナマエ、……君は多分
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