シャルは、どうして…?


昨日いきなりシャルにキスされた。何が起こったか分からなくて、気付いたらシャルの胸を突き飛ばしていた。
本当にシャルが本気だったら、突き飛ばすことなんて出来なかったはずなのに、突き飛ばせたシャルの表情は悲しそうだった。シャルの方が悪いはずなのに、私が悪いみたいな気がして思い出すと胸が痛くなる。

「お疲れ様でしたー」

ぐるぐるとシャルの顔が頭を巡って、今日は仕事がほとんど手付かずで1日が終わってしまった。明日は今日の分まで頑張らなきゃなー、とぼんやり考えながら会社を出る。

「すみません、お尋ねしたいんですけど…」
「え?…はい」

ぼーっと、考えなくても行ける家までの帰路を歩いていると知らない人に声を掛けられた。

「ちょっと道に迷っちゃって…」
「どこに行くつもりだったんですか?」

振り向くと立っていたのは優しそうな感じのスーツの男の人。額には包帯が巻いてあるのになんだか違和感を感じなくて、それでいて格好良い。
普段平凡な生活しかしていない私にとって、こんな格好良い人と接するのは今のところシャルくらいしかいないから、ちょっぴり緊張する。

「実はこの近くにレトロな感じの喫茶店があるって聞いたんですけど……、どうも初めて来るものだから分からなくて…」
「喫茶店……、ああ、多分わかりました。私もよく行く店なんですよ。良かったら案内しますよ」
「本当ですか、助かります」

目を細めてにこやかに笑うこの人を見て惚れない女の人なんていないんだろうなぁなんて、思った。

「あそこのマスターの作るサイドメニューなんかもすごく美味しいんですよ」
「そうなんですか、楽しみです。友人がよく行くらしくて1度行ってみたかったんです」
「ちょっとだけ裏道だから分かりにくいんですけどね。あ、この道を入って…」

そう言って小道に入ろうとした所で腕を掴まれた。

「え?」
「あ、ごめんなさい。名前聞いてないって思って」
「え?名前?」
「そう。名前教えてもらえますか?」
『ナマエです。貴方は?』
「クロロ=ルシルフル」
「クロロさん、ですね」
「さん付けだなんて…クロロと呼んでください……ナマエ」
「え?」

次の瞬間、私の意識はフェードアウトした。最後に見えたクロロさんの表情はさっきまでと違う妖しい笑みを浮かべていた。

何が起きているのかなんて知るよしもなかった

シャル、
ALICE+