こんな時、考えるのは貴方のことばかり


「これでも食え」
「…………」
「大丈夫だ、変なものは入ってない」
「……いただきます、」

あれからどれ位の時間が経ったのか、この部屋には時計がないから分からないけれど多分丸1日くらいは経ってると思う。こんな時でもお腹は減るもので、出された食事に手を伸ばす。
初めは私も警戒して、寝ないでベッドの端でクロロさんを睨んでたけど、お風呂に入ると言って出て行って、戻ってきたクロロさんが出会った時と同じ様に前髪を下ろせば、何故か緊張感が揺らいでしまって、気付いたら寝ていた。そして今に至る。

「………なんだ?」
「いえ、なんでも…」

昨日のとは打って変わってのこの雰囲気にどうしても戸惑ってしまう。あれって…夢じゃないよね?
でも、この家から抜け出そうという意思が出ないのは、きっと逃げ出せないって自分で分かっているからだと思う。昨日のあのクロロさんはただ者じゃなかった。素人のわたしでも分かるくらい彼は危険な人物だと思う。

「ナマエ、」
「え?」

与えられたパンをかじりながら考えていると急に名前を呼ばれた。一瞬、シャルの顔が頭によぎった。

「ちょっと出掛けてくる。夜には帰る」
「……あの、」
「言っておくが、俺は盗賊だ。」
「……え?」
「欲しいものは奪ってでも自分のものにするのが主義だ。……お前が逃げ出そうとするならこっちもそれ相当の対応をしよう」

それだけ言って、クロロさんは出て行った。
……訳が分からない。あんなに怖かったのに、怖くしたのに今日はなんで普通にするの?私の眼が欲しいだけなんでしょ?何故私の事を知ってるの?
クロロさんがいなくなってから落ち着いて考えると、たくさん聞きたいことが溢れてきて頭がパンクしそうになってきた。
それに、さっきのクロロさん……言ってることがこの前のシャルみたいだった。シャル……。
昨日も今日もお店に行かない私に疑問を抱いてくれるかな。ただキスのこと気にしてるだけ、って思うかな。
そういえば、……携帯。辺りを見渡すと、ベッドの下に私の鞄が無造作に落ちていた。それどころじゃなくて気付きもしなかったけど、クロロさんが拾って持ってきてくれたのかな。携帯を取り出して開けば不在着信8件とメール新着5件のお知らせが表示された。電話の6件は会社と上司と先輩から。残りの2件とメールも3件はシャルからだった。慌ててメールを開こうとエンターを必要以上に押すと、同時に電池残量なしのお知らせ表記とピーピーと音が鳴ってすぐに真っ暗なディスプレイになった・

「う、…そ」

メール開いてないのに、読んでないのに電池が切れちゃうだなんて……役立たず…。
シャル、わたしは一人でここから逃げ出せないけど、シャルならここから連れ出してくれるのかな?シャルも、盗賊だから奪ってくれる?それともわたしなんて奪う価値もないかな?
シャルに会いたいなぁ…、

1人にされた孤独な部屋
生活感のない質素なこの空間は昔を思い出しちゃうよ
ALICE+