04

出掛けるぞ、と急に言い出したクロロは私が朝食中だったのもお構いなしで半ば無理矢理連れていかれた。

まぁ朝食は良いとしよう。半分以上食べたし、お腹もある程度膨れてる。
でもね、もしこのまま歩く…じゃなくて走れば人通りの多い街に出るよね?ね?私の格好分かってる?こんな人前に出れるような格好じゃないんですけど?!

「ねぇ?!」
「なんだ?」
「私こんなボロボロな格好で街なんか行けないし!恥ずかしいし!通り抜けだったとしても不可!」

私だって年頃の女の子なんだから、そういうの気を遣って欲しいよね。ただでさえウボォーギンがムキムキ計画を遂行してるっていうのに。あんなのになりたくないよー!あんなムキムキになったら恥ずかしくて、どんな格好でも出歩けない…!

「そんなことか、良いから黙ってついてこい」
「ふざけないでよ…!」

もう街は迫ってるんだよ?!私の女の子としての余命は数分しかないというのですかクロロさんよ……、
そもそもクロロ走るのめちゃくちゃ早いし。普通じゃないでしょこれ。まぁ常人じゃないからこれが普通?あれ?普通って何?
でもそれについていけてる私ももう普通じゃない感じ?これがウボォーギントレーニングの成果なのか…さすが。

「着いたぞ。服買ってやるから好きなの選べ」
「え?本当に?!」
「嘘を言ってどうする、いらないならそれでも俺は構わないが」
「いる!いります!」

街の外れにある小さな洋服屋さんに入ったクロロは開口一番そう言った。街の1番外れのこの店を選んだのは、配慮なのかそれともセンスが良いからなのかと聞きたくなるくらいに、見渡す限りセンスの良さそうなアンティーク達が並んでいて異世界に来たみたいだ。
さっきまであんな汚いアジトらしいアジトにいたなんて嘘みたい。洋服だって可愛らしいけどブリブリしてないし、だからと言ってここ最近着てるような色気も何もないようなものじゃないし、久しぶりの洋服屋さんに興奮しちゃってる。
やっぱり私も女の子だもんね、ウボォーギンのムキムキ計画なんてごめんだよ!

「とりあえずこれを着ろ」
「え?あ、可愛い…」

目移りしながら店内をウロウロしてるとクロロに洋服を渡された。ワンピースのその服はハイウエストで切り替えになっていて可愛いけど動きやすそう。

「クロロってセンス良いんだね」
「なにを今更」

私よりも高い身長のクロロは、さも当たり前のようにそう言って私を見下ろした。どや顔がちょっとムカつくけど、子供っぽいのが可笑しくてしょうがないかぁって呆れた。
まぁ、買ってもらう身分ゆえ逆らってはいけないですよね。ありがたやありがたや……

「ありがとう、とりあえず着てみるね」
「そうしろ」

他にはお客さんがいないから油断していたけど、自分の今の服装を思い出して慌てて着替えようとすると、いつの間にかにこにことした店内の雰囲気通りの店員さんが待っていて試着室を案内してくれた。あの店員さんめっちゃ可愛い…!
さっそくウボォーギンとのトレーニングのせいで汚れたり伸びたりして、よれよれになったTシャツとショートパンツを脱いでワンピースに袖を通す。
か、可愛い…!
自分の容姿を褒めるわけじゃなく、純粋に洋服が可愛い!裾のスカートは着るとさっき見ていたより広がって可愛くて可愛くて、女の子に生まれて良かったー!ってなってしまうくらいだよ。悶々と試着室で小さくジタバタとしてると、クロロに外から急かされて試着室のカーテンを開ける。

「中々似合うじゃないか。じゃあ行くぞ」
「え?!でも、」
「会計は済ませた。靴はそれを履け。あとこれも持ってけ」
「え?え?」

言われて足元を見ると、さっきまで履いていたスニーカーは消えていてワンピースに合いそうなショートブーツが揃えて置いてあった。それを急いで履いて、そして差し出された紙袋を受け取って中を覗くと何着も洋服が入ってる。

「なにこれ?」
「見て分からないのか?洋服だ。1着じゃ足らないだろう、毎日同じ物を着ていたら汚らしいしな」
「でも、良いの…?こんなにたくさん」
「俺を誰だと思っている」
「クロロ?」
「次に行くぞ」
「え、待って!」

さっさと出ていくクロロを慌てて追うと、にこにこしたあの可愛い店員さんがいつもありがとうございますと見送ってくれて、いつも?ってここ御用達なわけ?!って聞きたくなったけど、颯爽と走り出しているクロロを追い掛けるので精一杯で、とりあえず置いてかれないようにすることに集中した。

おかいもの


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