『もう、なんであたしが1人で…』
ぶつぶつ言いながらも早くこの作業を終えてこの部屋を立ち去りたいのが本音。今日が私の出席番号と同じだからと言う理由で先生に言付けられた手伝いは、理科室の片付け。(正解に言えば実験後の片付け)
簡単な作業とは言え1人は辛い。…とゆうかこの教室にいることが辛い。
実験で使う薬品の理科室独特の匂いに、私が1番怖い人体模型とホルマリン漬けの……いや、これはもう言わないでおこう。
……てゆうか、考えただけで本当に怖くなってきた。部活あるから、と言ってさっさと行ってしまった友達も薄情だけれど、私も逆の立場ならそうしたくなるから恨んでる暇があったら、ちゃちゃっと終わらせて一刻も早くこの教室を出ることにしよう。
「なまえ?自分まだやっとるん?」
『あれ…白石くん?』
誰もいない理科室に入ってきたのは白石くんで、テニス部の部長の彼はユニフォームを着た格好のままだ。
「来るの遅いから来てみたんやけど、そういえばなまえって意外に鈍臭いし、怖がりやったな」
少し馬鹿にしたような言い方が気に障るけれど、マネージャーなのに部活へ行くのが大幅に遅れていることも、怖がりも事実で言い返せない。
「俺も手伝うてやる」
『え……良いの?』
「うちの部員らはなまえがおらんとうるさくて堪らんのや。特に金ちゃん。たちが悪いのが光や」
『光…?』
「…自分ほんまに鈍感やな」
『そんなことないよ!この前だって体調悪いのにごまかしてた子に気付いたし、白石くんが熱出した時だって気付いたの私だよ!』
「意味違うんやけど……まぁええわ」
『なにそれ…あ。そのビーカー洗ったら終わりだよ』
「ほな、部活行こか」
『うん。ありがと、助かった!』
「それやったら手伝うたお礼が欲しいなぁ…」
『…え〜、ジュース位なら奢るけど』
白石くんがそんな事言うの珍しいなぁ…なんて思ったけれど、本当に助かったしまぁいっか…って思ってポケットからお財布を出す。
「なまえ、」
『え?』
ふと理科室を出ようと前方を歩いていた白石くんが止まったようで、手元のお財布が影で暗くなった。
「…ごちそうさん。お礼はこれでえぇよ」
『……へ?』
何が起きたのだろうか……
こともあろうに彼、白石くんはあたしのおでこに……
『き、キス…っ!』
「おでこにやん」
『で、でも…!』
「さ、部活行くで」
出口まで辿り着いた白石くんはそれだけ言って先に行ってしまい、力が抜けた私は両手にお財布を持ったまま、へなへなと床に座り込んで誰もいなくなった理科室で顔を真っ赤にさせるしかなかった。
薬品の
香りに包まれた
白石くんが近付いてきた時、ふわりと薬品の匂いが鼻についた