朝目覚めると、いつも私は蔵ノ介おにぃちゃんの腕の中。毎日おにいちゃんのベッドで寝るのが私の習慣で、そんな私を腕に抱いて寝るのはおにいちゃんの習慣。
『にゃー』
「…ん、」
起きて、と腕を擦り抜けておにいちゃんのお腹の上に乗って精一杯揺すると、寝ぼけたおにいちゃんが寝返りをうつ。
『にゃー』
「ん、なんや…なまえか」
『にゃー』
はやく起きないと朝練遅れちゃうよ、と枕元のテーブルに置かれた目覚まし時計の横に飛び乗ってポンポンと前足で叩くと、やっと気付いたみたいでベッドから立ち上がってくれた。
『…にゃー』
おにいちゃんの足元について歩いて一緒に部屋を出る。
「蔵ノ介シャワー浴びるなら早く浴びてや。姉ちゃんも起きたら入りたがるんやから」
「今から入るから大丈夫や」
「ならえぇけど。じゃあ今のうちに朝ご飯の準備しといたるから」
「あぁ、」
『にゃー』
「なまえは、こっちやで。ご飯出したるから」
『…にゃー』
お風呂場について行こうとする私をママが抱き上げて、リビングへ向かう。
「もうなまえったら本当に蔵ノ介にばっかり懐いて!私も可愛がってんのに淋しいやんか」
私を抱いたまま牛乳とそれを入れるお皿を出しながらそう言ったママの頬を軽く舐めると、甘え上手なんやから〜と言って、ご飯のキャットフードのお皿に1つニボシを乗せてくれた。
『にゃ〜!』
ママありがとう、と最後の楽しみによけてご飯を食べ進めているとシャワーを浴び終わったおにいちゃんが肩にタオルをかけて、リビングに入ってきた。
「なんやなまえ、ご機嫌やな」
「今日は好きなニボシつけてあげてん」
「…現金なやつやわ」
後ろからそんな会話が聞こえたけれど、ご飯に夢中な私はそれどころじゃなかったからそのまま食事を続ける。
「なまえ、」
『…にゃ?』
「ほら」
『にゃー』
呼ばれて振り返ると、おにいちゃん用に朝ご飯に出された焼き魚の身を少し私に分けてくれた。
ニボシも大好きだけど、やっぱり焼いたお魚のが美味しくて好きだから、嬉しくなって尻尾が揺れる。
「あー!せっかくニボシあげたんに、蔵ノ介が焼き魚なんかあげたら余計蔵ノ介に懐くやんかアホ!なまえはあんたのやないんやで!」
ママがおにいちゃんを軽く怒ったけど、おにいちゃんは笑って軽く流す。
「しょうがないやん、なまえが俺がえぇって言うんやから。なぁ、なまえ?」
『…にゃー』
「憎らしーい!この阿呆息子!はよ行かんと遅れるで!」
「せやな、そろそろ行くか」
『にゃー』
玄関まで一緒に行ってお見送りをする。
「行ってくるわ、良い子にしてるんやで」
玄関先に座った私の頭を大きな手でぐりぐり撫でてから抱き上げて、ちゅ、とキスを1つ落としてからおにいちゃんはお家を出て行った。
おにいちゃん、
これがあたしの日常。昨日も今日も明日も、私はおにいちゃんの帰りを待つんだ。