彼は強い。
2年の時から部長をしていて、努力する事を惜しまなくて、人望も厚い。
そしてあの整った顔。彼に非の打ち所は無いに等しくて、たくさんの女の子達が彼に黄色い声援を送る。私もその例外ではなくて。
だけど、1つだけ他の女の子達と私が違う事がある。
『白石くん、』
「……なんでおるん?」
それは、練習が終わった後もずっと1人で自主練をしているのを知っていること。いつも真っ暗になってしまうまで練習をする白石くんはとても綺麗で格好良くて、見惚れてしまうくらい。
誰も知らないその姿を見付けた時は息が止まるかと思った。
『白石くん、もう帰った方が良いよ』
「……みょうじに関係ない」
『……』
ずっと彼を見てきた。だから知ってる。
白石くんは負けた後、いつもの倍練習する事を。
それでも、今日はそれと違った。
『身体壊しちゃうよ』
白石くんは泣いていた。
不謹慎だけど、その涙すら綺麗でずっと見ていたくて。
「せやから、みょうじには関係ないって言っとるやろ!ほっといてや!」
今日は倍とかそんな生温い物ものではなくて、素人のあたしが見ても身体を壊しそうだって分かる位でたらめ。
そしてそれは、
『汗で涙を隠すため…?』
「!」
核心を突いたのか、白石くんは目を大きく見開いて私を見た。
『図星?』
「……」
きゅっ、と小さく踵を返す音がして白石くんはまたコートに向いて練習を再開してしまった。
はぁ、と1つだけ溜息をついて白石くん側に背を向けてフェンスによしかかった。
『星が綺麗だね、白石くん』
「…っ、…はぁっ」
聞こえてないのか、聞こえてないふりをしているのか白石くんからの返事はない。
『……ずっと白石くんが沢山練習してたの知ってたよ』
だって、ずっとずっと見てきたから。
『試合すごく格好良かったよ、』
ただ、貴方の傍にいて少しでも力になれば。笑ってくれたら。
「……自分、試合見に来てたんか」
『うん』
返事が返ってきたと思って振り向くと、白石くんはフェンス越しにすぐ後ろにいた。汗をたくさんかいているのに息が思いの外乱れてないのはやっぱり普段の努力の賜物なんだろう。
「……なんで?」
『ずっと見てたから』
「…………帰る」
『え?』
「遅いから送る」
『え?い、いいよ!そそんな!』
「何言うてん、女の子が危ないやろ」
『…あ、ありがと』
「これからは、遅うに1人で帰ったらアカンで」
『え…?』
「これからも見てくれるんやろ。着替えてくるからちょっと待っとって」
びっくりして、白石くんを見ると微笑んだ彼の顔が目に入ったけれど、すぐ歩き出してしまったからそれは一瞬だけだった。
『白石くん…!』
「なんや?」
それは傍にいて良いってことですか?
「…えぇんやないかな、」
『…う、…そ』
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