(戦争パロ)
手を離さんて言うたのに、何で離したん?
何で謙也はそこにおるん?
街の至る所から火の手が上がっとる。
たくさんの人達が悲鳴を上げて逃げていく。
わたしらも、はよ逃げなあかんのや。はよ……
『謙也!…なんで…!』
「…なまえ、無事なんやな?」
『手ぇ離さへんって言うたやん…!もう離れんて!何で離したん!』
しっかりと絡み合わせた手を謙也は突き放した。
そして突き飛ばされた私だけが助かって、謙也は落ちてきた瓦礫の下敷きになった。
なんで、なんで……、せっかく親が結婚してもえぇって許してくれた矢先なんに。一緒におれるって思ったんに。
例え謙也が徴兵されて死んだとしても、私に直接、私が最初にちゃんと通達が来るからって言っとったんに。覚悟かてしとったんに。
『こんな所で死ぬやなんて覚悟もなんもしとらん!いやや!』
瓦礫の隙間から出てる謙也の腕を引っ張る。
顔と左腕は出とるんや、頑張れば引っ張りだせるかもしれへん。
「なまえ…、無理や」
『無理やない…!私は謙也と逃げて、生き延びるんや!』
「なまえ、俺は無理や…ごめんな、」
『っ…!そないな事言わ…んといて…』
堪えていた涙が溢れ出てくる。
涙腺が壊れたかのような勢いに、もう拭う気すら起きることはなくてただ子供みたいに泣きじゃくりながら謙也の腕を引っ張る。
「……もぅええから、なまえ」
『け、んやぁ…!』
「もうえぇからもっと近くで顔見せて」
ごしごしと、初めて自分の顔を腕で拭ってから謙也の腕をそっと握ったまましゃがみ込む。
「なんや、えらい酷い顔やな」
『うる、さい…』
「泣き過ぎやねん、……鼻水まで出とるわ」
『…いいの、!』
「……好きや」
『……!』
そっと伸ばされた腕が私の頬に触れる。
わたしも好きや、と言いたいのに声が出なくとその代わりにまた大量の涙が溢れ出ていく。
その手に自分の手を重ねると、謙也の体温が熱い位に感じてあぁ生きとるんやぁと思えるのに。
「…なまえ、じきにここにも火の手が回る…せやからもう行ってや…頼むから」
『…なに言うてんの…!わたし行かへんで…!』
「行くんや」
『なんで…!なんで、そないなこと言うん!?』
「なまえ先輩…?!」
『光……?』
「何しとるんですか、はよ逃げな……」
そう途中まで言って光は気付いたようやった。
逃げれる状態やないことを。
『お願い、光…謙也を!』
「財前、なまえを連れて逃げてくれ」
『謙也…!』
「お願いや、財前…なまえだけは…」
「……謙也さん」
『いやや!いやや!わたしここにおる…!』
いやや、自分だけ逃げるやなんて。
ずっと謙也とおるって決めたんや、ずっと手を放さんって。
「なまえ、なまえだけは生き延びてや…」
『謙也、やめてや…!』
「っ!先輩!」
その時やった。
すぐ謙也の後ろの方が爆発して、謙也がおる瓦礫が炎に包まれた。
『いやー!!謙也ーー!!!』
何故やろか、最期の彼は微笑んでました。
その顔をあたしが忘れることはありません。
今でも、あの時あそこを離れないで一緒にいられたら良かったのにとそう思う。
そんな事言ったら謙也は怒るんやろうけど、でもやっぱり思うんや。
せやから次が、もし来世というモノがあるとするのなら、今度は絶対に手を離さないと誓うから、謙也もどうか誓ってください。
(東京大空襲のドラマ見て突発)