『謙也、』
「なん?」
『本当に良いの?』

マネージャーでも何でもないけど、見に来てって言われて見に来た全国大会。
準決勝まで進んで喜んでたのに、財前くんとのダブルスってオーダーだったのに、千歳くんに譲っちゃうなんて。

『馬鹿でしょ』
「馬鹿って言うなや!阿呆って言うて…やなくて。格好良いて言うてや!」
『格好良くないもん!謙也の馬鹿馬鹿馬鹿!』

なんで出ないのよ。馬鹿じゃないの?
今年最後なのに、だから東京まで着いて来たのに。

『謙也はいつもそうだね。』
「は?」
『侑士くんの時も、本当は行ってほしくなかったくせに』
「…いつの話してんねん」
『昔からいっつもいっつも…自分の事は後回しで、良い人ぶって馬鹿みたい』
「自分なぁ…いい加減に……て、なに泣いてんねん」
『うるさいな!目から汗かいてるだけだもん!あー……あっつい!』

私は知ってるんだ。
謙也がこの全国大会のために頑張ってたこと。謙也だってレギュラーなのに、皆の足引っ張らんようにって、部活が終わった後に1人でストリートテニス場で練習してたの。
去年の全国大会で、自分が負けたせいで白石くんまで試合回らなかったって。
今年こそって。

「なまえ、」
『…っ』
「なまえが泣かんでもええやろ…全く」
『だって…謙也が、馬鹿だか、ら…!』

涙で汚いだろう顔を見られたくなくて、下を向いていた顔を上げると思っていたより謙也の顔が近くてびっくりした。

「なまえ」

謙也は1つため息をついて、それから呆れたように笑った。

「さんきゅ」
『……お疲れ様』
「あぁ、」

そう言って謙也が私の頭を撫でた。

『謙也ぁ〜…』
「…せやから何でなまえが泣くんやって」
『謙也が泣かないから…!代わりだ…もん』
「……なまえ?」
『え?』

いきなり名前を呼ばれると同時に腕を強く引っ張られて、勢いで謙也の胸にぶつかるとそのまま強く抱きしめられた。


ずっと好きでした。
大会、終わったら言おうと思っててん。

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