(アリエ/ッティ放送してたので思わず…!パロ)
『やった…お砂糖げっと…』
大きな角お砂糖を抱えて、夜中のキッチンの上を走る。
お砂糖は必需品で消費が激しいけど、角砂糖が1つあれば暫くは持つから、持ってきたカバンの中にしまい込んで担ぐ。
それからついでにお醤油も持ってきた入れ物に3滴ほど頂戴した。
両親との家を出てから早数ヶ月。自分で見付けた新しい借りぐらしのお家は中々快適で、狩りも上手にやっている。1人だと借りる量も少なくて良いし、やってみると結構楽だったり。
よし、今日はこれだけで帰ろう。そう思ってキッチンから下りようとした。その時だった。
「……水、」
『わ……!』
やばい。そう思った時には遅かった。急いでシンクに隠れたけれど、突然現れた人間は運悪く水道の蛇口を捻ってしまった。
『きゃ!』
「ん……?」
ジャバジャバと、たくさんの水がシンクの中を濡らす。それは私の髪や服に掛かって、まるで土砂降りの雨の様。
思わず声を上げてしまって慌てて端っこに隠れながらシンクをよじ登る。人間が電気を付けてなかった事が唯一の幸い。そう思って登りきった所で、ドンと押されて思わず転んでしまった。
どうしよう、人間に見付かってしまった。
お母さんとお父さんに人間には見付かってはいけないって、そうきつく言われていたのに。人間に捕まったら何をされるか分からない、だから人間に見付かってはいけない、と。
どうしようどうしよう怖いよ。上半身だけなんとか起き上がるけれど、足がすくんで立ち上がれない。
怖くて振り向けない。私、ここで捕まってしまうのかな……。考えただけで涙が込み上げて、視界が歪む。
「自分、人間なんか…?」
『……え?』
恐る恐る振り返れば、薄暗い暗闇の中だけど人間で言うと多分私くらいの年頃の男の子が不思議そうに、私を覗き込んでいて。
彼の大きな目にびっくりして思わず声を上げて後退った。
「驚かせてしもたな、怖くないから泣かんといて?」
『…っ!』
「大丈夫、やから」
そう言ってちょっと強く…いや彼にとってはきっと優しく優しく、私の頬を指の腹でそっと拭ってくれた。
「俺は蔵ノ介って言うんや。自分は名前なんて言うん?」
『……あの』
「名前あるん?」
『……ある』
「教えてくれへんやろか?」
『……なまえ』
「なまえ、ええ名前や」
『…!』
そう言って男の子、もとい蔵ノ介は人差し指の先で私の頭を撫でてからそっと笑った。
どうしようどうしよう。どうしよう…!
人間て怖いものじゃないの?危ないものじゃないの?
優しいふりして罠なのかな?
『あ…!』
カバンに入れた角砂糖が水に濡れてべちゃべちゃになってる。これじゃあ、使えない。
『お砂糖が……』
「砂糖?」
『角砂糖……せっかく借りたのに……』
「……せやったら、これ持ってき?」
蔵ノ介はそう言いながらさっき一生懸命私が借りた角砂糖の瓶をいとも簡単に開けて、1つ差し出してくれた。
『……いいの?』
「おん、もちろんや。せやけど、」
『せやけど?』
「今日のことは俺達だけの秘密な?」
『!』
「おやすみ、なまえ」
『……おやすみなさい、蔵ノ介』
そう言って蔵ノ介はコップに一杯お水を飲んで、キッチンから出ていった。
人間には見付かってはいけない。
だけど、蔵ノ介なら大丈夫なのかなって、そう思った。
また会うこと……あるんだろうか、なんて少しだけ淡い期待を抱いて蔵ノ介のいなくなったキッチンを下りて、私も家に戻った。
借りぐらしの、