「新開くん」
「ん、どうしたの?」
「新開くんと私今日、日直だから放課後書類の整理手伝って欲しいって先生が……」
クラスメイトのみょうじさん。あまり話したこともなければ、印象も薄い存在。
でも、おずおずと声を掛けてきた姿がなんとも小動物みたいで可愛い。みょうじさんが男子と話してる所って全然見たことないし、もしかしたら苦手なのかもしれないな。
「あの、新開くん部活だったら私だけでも出来るけど」
「いや、大丈夫。2人でやった方が早いだろ?」
「……あ、ありがとう」
みょうじさんは、ほんのり頬を染めて御礼を言うと、さっさと戻って行ってしまった。
……自惚れでなければ、みょうじさんって俺の事好きなのかもしれない。2年の時からクラスは一緒だけど、多分そう。
でも、彼女こそ俺の事なんてイメージで見てるんだろうなって思う。だって、俺のどこが好きなの?と思うくらい、接点がないに等しい。
かといって、みょうじさんは自分からアクションを起こすわけでもなければ、告白をしてくるわけでもないから、特に俺達の間に何か起きることはない。
だから、そのまま気付かないふりをしてればいい。
「本当に大丈夫……?」
「大丈夫。寿一にも言ったし」
「寿一?」
「ああ、福富のことね」
「福富くんって下の名前、寿一くんて言うんだ」
「うん」
誰もいなくなった教室で、担任から渡されたプリントをクラス分、冊子にする作業。簡単だけどページ数が結構あるから思ったより手間がかかる。
お互い無言での作業がしばらく続いて、いい加減何か話した方が良いかな、なんて思っていたら先に沈黙を破ったのはみょうじさんだった。
「意外と、時間かかるね」
「一人でやらなくて良かっただろ?」
「そうだね、でも彼女さん気にしたりしない?大丈夫?」
「え、そんな事気にしてるの?」
「うん、だって二人きりってなんだか良い気はしないんじゃないかな? あ、でも私どうにかなるとかないよね!図々しいよね、ごめんなさい!」
「そんな心配しなくても、この前別れたから大丈夫だよ」
「え、……別れちゃったの?」
「うん、というか俺に彼女いるって知ってたんだ?」
……俺に興味あるから?
どんな反応するかな、なんて少しの好奇心と悪戯心で白々しく聞けば、気まずそうな顔をして俯いてしまった。
あ、やりすぎたかも。このタイミングで勢い告白なんてされたら厄介だ、失敗したかもしれない。
そう思って、違う話題に変えようと口を開いたのより少しだけ早く、みょうじさんは勢いよく顔を上げた。
「新開くん、目立つから!だから、噂とか耳に入ってくるというか……なんというか、」
「そうかな?じゃあ、別れたってのが広まるのも時間の問題かぁ」
あまりに必死な顔をして言うみょうじさんの姿がなんだか可愛く見えて、それ以上は突っ込まないでおこうと、何でもないような振りをする。
きっと君のイメージの新開隼人は、そんな意地悪なんてしないだろうからね。
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