みょうじさんはうさ吉の事を、誰にも言わないと約束してくれた。
そのかわり、たまに自分は見に行って良いか?と。交換条件?と聞けば、そうじゃないけどまた抱きたいな、って控えめな伏し目で言われて、数秒考えてから勿論と笑って答えた。


「新開くん、これあげる」
「なに?ありがとう」

渡された紙袋の中身を覗けば、ラビットフードが入っていた。

「これ、わざわざ買ったのか?」
「うさ吉って野菜メインでしょ?」
「あぁ」
「だから、固形フードもあげた方が良いかなって。小さい袋のだから、うさ吉にあげて?」
「ありがとう」

うさ吉元気?と、小屋の前で網越しにうさ吉を触れるみょうじさんは、教室にいるときよりも饒舌で明るい気がする。
うさ吉の件があってから、みょうじさんとは数日に1回はここで会うようになって、必然的に話す機会が増えて、今まで全くなかった接点が出来てしまった。こうして話せば話すほど、みょうじさんの態度は明白で、少なからず好意は持たれてる、確信できるレベルで。

「こうやって新開くんと話せるようになるなんて、少し前なら思ってもみなかったな」
「……そうか?クラスメイトなのに?」

俺の心を見透かされたような話題に、ドキっとする。みょうじさんの視線が、未だうさ吉に向けられたままで良かった。

「新開くんは目立つしクラスの中心にいるから、私みたいな地味な奴、何かないと話す機会なんてないよ」
「そうか?目立つとかは関係ないと思うけど……、確かにうさ吉がいなかったら、こんなに話す機会はなかったかもしれないな」
「でしょ?」

そんな顔して言うなよ。違うだろ。みょうじさんが見てる俺は俺じゃないんだよ。俺を通した理想を好きになってるだけだ。それは俺を好きな訳じゃないんだ。だから、そんな顔で見ないでくれ。
なのに、そんな事を知る由もない彼女は頬を染めた顔で俺を見上げた。
いつも、そうだ。そうやって好きですって顔して、好きですって寄ってきて、……最後は思ってた俺じゃなかった?
俺だって普通の高校生男子だぜ?

「え……、しん、かいくん?」

今度は振り回されない。俺が振り回すんだ。
俺は唇くらい真っ赤になったみょうじさんの頬に手を添えた。

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